short

□ぱぱになりました
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 幸村 ver.






「ただいま」       
『……おかえり!』    


いつものように玄関まで走っ
ていきお出迎えをすると、精
市は笑顔で私を抱き締めてく
れた           


段差になった玄関のおかげで
少しだけ近くなった目線  

ちょっと背伸びをすればとど
く、何時もは遠い精市の唇に



チュッ――        



今日は私からキスをした  




「ん?どうしたんだい?今日
は随分積極的だね。……誘っ
てるの?」        
『違ッ!そんなんじゃ――』
「確かに最近ご無沙汰だった
し……」         
『だーかーらー、そういう意
味じゃないの!!』    
「久しぶりにヤろっか」  
『人の話を聞け、人の話を』



今日はどうしても言わなきゃ
ならないことがある。何時も
はおねだり上手な精市に流さ
れてしまう私だけど、今日だ
けは絶対に、ダメ!    

なんとか精市を説得しようと
頑張ってみた……が    


『ご飯冷めちゃうから…』 
「そんなの後で温めて食べれ
ばいいだろ?」      
『ほ、ほら今日は精市の好き
な焼き魚だからさ!』   
「………いい。ヤる」   
『ちょっと間がありましたけ
ど…』          
「うるさいな。何?俺を怒ら
せたいの?」       


どういうわけか不機嫌MAX!状
態にさせてしまった。こうな
ってしまえば謝る…なんて意
味のないこと       


『精市、取りあえず…リビン
グにいこ?ね?』     
「………………」     


でもこのままじゃ埒が開かな
いので、勇気を振り絞って問
い掛けると…精市は黙って靴
を脱いで、上着を私に少し乱
暴に手渡すとイライラした足
取りで中へと入っていった 


私はその後ろ姿を見送ってホ
ッと胸を撫で下ろしたのだっ
た            




「………………」     
『せ、精市…?』     


リビングに入ると精市がムス
ッとした顔でソファーに座っ
ていた。本当に怒ってる。最
早話し掛けないほうがよさそ
うだけどそういうわけにもい
かない          


恐る恐る精市の名前を呼ぶと
「何?」と冷たいがちゃんと
返事が返ってきた     

何?のあとに「うるさいな。
今話し掛けないでよ」みたい
な台詞を言ってそうだけど 


でも取りあえず返事が返って
きたから私は意を決して話す
ことにした        


『あのね、精市。大事な話が
あるの…』        
「……だから何?別れ話とか
俺聞かないから」     
『…え……』       


精市の言葉に勇気が出た。こ
んなふうに言い方はあれだけ
ど、私はちゃんと愛されてい
ることが分かるから    

何があっても、精市は離れて
いったりなんかしない   


この人となら…      


そう、思った       



『実はね、赤ちゃんが…でき
たの』          
「だから別れ話は…………っ
て、え?今、……なんて?」
『だ、だから…赤ちゃんがで
き――』         


私の言葉はそこで遮られた 

全部言いおわる前に精市に、
抱き締められてた     


そのままぎゅうぎゅうと抱き
締めてくる。正直、……苦し
い            


『精市……?あ、あの苦しい
んですけど…』      
「あ、ご…ごめん。つい嬉し
くて………」       
『え、嬉しい……?』   
「当たり前だろ」     
『ホントに?赤ちゃん…産ん
でいいの………?』    
「何いってるんだよ。産まな
い何ていったら俺が許さない
よ?」          
『う、うん!精市っ…ありが
とう!』         
「馬鹿。それは俺の台詞でし
ょ」           



『馬鹿とは何よ!』といって
見上げた精市の顔は今までの
黒ゼリフからは到底想像でき
ないような、デレデレの精市
がいた          



――ベシ         


『痛ッ!!』       
「ジロジロ見てるからだろ。
全く…調子に乗るな」   
『はぁ〜い』       



それもね、照れ隠しだって…
分かってるから      


精市、大好きだよ     




「へぇ……俺は、愛してるけ
どね」          
『……//////』      





お腹の中にいる天使…   

精市と私をぱぱとままに選ん
でくれてありがとう    

二人で君を精一杯愛します 


だからどうか……     

元気に生まれてきてね   





ぱぱになりました





「うまいね。そうだよね、神
の子から生まれるんだから天
使だ」          
『いや、そういう意味で言っ
たんじゃないから』    
「え?何?何か問題?」  
『な、なんでもありません』
「あ…でも俺もぱぱになるん
だから何時までも神の"子"な
んておかしいよね。じゃぁ俺
は今日から"神"かな!」  






でも、やっぱり精市くんはそ
のデレデレ顔は抑えられない
ようです         




END...

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