鳴門短
□曖昧交差
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「ねー、シカマルあそこ寄りたい」
「あぁ?めんどくせぇな…」
曖昧交差
任務帰りに偶然散歩しているというシカマルと会って、せっかくなので私も肩を並べて歩くことにした。その途中で甘味屋を見つけて冒頭の台詞に戻る。
「愛が足りないよシカマル君」
「意味が分かんねぇよ」
私がはぁー、とわざとらしく大きな溜め息を漏らせばめんどくさそうに答えるシカマル。酷いよね。
「仮にも彼女に対してそれはないんじゃないの?ねぇ」
「………」
そう。私はシカマルと恋仲にある。きっかけは曖昧過ぎて覚えていない。なんか知らないうちにこうなってました状態。
シカマルもそ私の言葉に黙りこくったまま歩いている。本当にめんどくさくなるとこの男は喋らない。
ねぇ、私達本当に恋人なのかしら?
私にだって一応愛はあるんだよ。一応ってのは失礼か。好きなんだよ、シカマル。
この状態はどうであれ班の違う私達は最近任務で一緒にいれることが少なくなったから、今こうしてシカマルと肩を並べて歩けるのは嬉しいんだよ私。
あなたは違うの?
やっぱりなんとなく雰囲気で付き合ってるだけなの?むしろそう思ってるのは私だけ?
考え出すともやもやと脳内で不安だの焦りだの、悲しみだのが渦巻いている。
いろいろなものが脳裏をよぎって私は頭を振った。甘味屋に寄り道どうこうでどうしてこんなところまで考えてしまうの私。
もしかしたらシカマルだって任務の帰りで疲れてるかもしれないんだし。あれ、でも疲れてるなら甘味ってむしろ良いんじゃないの?
「……ななし?」
私が黙り込んでいたのが不思議だったのか、唐突にシカマルが私の名前を呼ぶ。はっと我に返り、顔を向ければ大丈夫かといった表情でシカマルがこちらを見ていた。
「あ、ごめん」
「大丈夫かよ」
うん、と頷けばそうかとまたやる気のない顔に戻る。腕を首肩に回しどこか遠い場所をぼうっと眺めていた。このままどうすれば良いのかわからない私に痺れを切らしたらしいシカマルはまためんどくさそうに言い出した。
「で、」
「うん?」
「寄らないのかよ、甘味屋」
そう言われて私は目を丸くする。あれ、さっきめんどくさいって言ったじゃない。
私が再び黙っていると、その理由を察したのかシカマルは重そうに口を開いた。
「めんどくせぇとは言ったけど、行かねぇとは言ってねぇよ」
で、どうするよ。と言われてしまえば答えはもちろんイエスなわけだから、元気に行くっ!と言えばガキか、と失笑された。
そして歩き出すシカマルを見てふと、今までの間ずっと立ち止まって私が何か言うのを待っていてくれていたと気づく。
「ちゃんと愛あったね、シカマル君よ」
むふふと笑えば、
「うっせぇ、気持ち悪い笑いすんな」
そう行って少し早歩きになった。その隣に並ぼうと私も小走りになる。
それをちらりと横目で見てシカマルは小さく笑った。気がした。
「あぁ。それと、」
ちゃんと好きだぜ?
…ちゃんとは失礼か。
好きだぜ、ななし。
愛情一途
(ねぇ、この流れで奢ってくれたりとか…)
(はぁ?めんどくせぇ)
(でも断らないんだ……ふふっ)
*
なんだこれ。