鳴門短

□わがままな彼女
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今日も俺の嫌いな日が来る。


わがままな彼女



「暑いよー…」

「……」


今日の気温は38℃だそうだ。
晴天が続き、暑さ対策をした方が良いとテレビの中の天気予報士がそう言っていたが実際家の中にいてもじわりと汗が首筋を撫でる。それだけでもう十分実感した。


「暑いよイタチぃ……」

「うるさいぞ、ななし」


ソファーにぐったりとうなだれているななしは団扇をぱたぱたと力無く動かし風を求めている。
まぁ暑いのによく家に来るもんだなと思いつつも、その辺は俺への愛なのかと自惚れる。


「イタチん家ならクーラーついてると思ったのにぃ…」


俺の浮かれた気持ちを一瞬にして砕いたななしには悪気はないのだろうが、今の俺には相当のダメージだと気付いているのだろうか。


「自分の家のクーラーつければ良いじゃないか」

「私の家は節電中なの」

「奇遇だな俺の家もだ」


そう言うと、こんな暑い日くらいは贅沢しようよと言い返してきた。自分はどうなんだ自分は。

呆れる俺なんぞお構いなしでななしは自分の持っている団扇を俺に差し出す。


「ん」

「なんだ」

「扇いで」


自分でやるの疲れた、そして早く受け取れと言わん許りに団扇をぐいと差し出す。

こういう奴だ、彼女は。


「別に構わないが、隣りに座っても良いか」

「んー、まぁ良いよ」


少し足を曲げて俺の座る場所を作る。その空いた場所に俺は座り受け取った団扇でななしに向かって風を送る。


「あー涼しい」

「良かったな」

「うん、ありがとイタチ大好き」


都合の良い大好きだなと苦笑しながら、その大好きが胸に響く。
これだけでも嬉しく感じる俺は彼女に相当甘いようだ。
前にサスケにも呆れられていたな。兄貴らしくねぇなとかなんとか。


「なんなら膝枕してやるが」

「それはいい。暑い」


と、悩む間もなく即答するななしにまた呆れ笑った。
彼女は自分の身が一番大事なのだ。彼女が暑いと感じれば近寄らせてすらもらえないし、逆に寒いと感じればいつでもくっついてくる。個人的には自分からくっついてくる寒い冬は好きだが、拒まれる暑い夏は好きではない。
こうやって今、風を送るという名目だが隣りに座らせてもらえるだけでも良い方だ。


付き合いたての頃はもう少しだけ可愛げを感じたのに。本当に少しだが。
しんみりと思い出に浸れば、手が止まっていると彼女からのお叱りを受ける。あの頃の愛は本当にどこへいったんだろう。

その時玄関の方でがちゃんと音がした。扉が閉まる音だとわかり、必然的にそこに誰がいるかもわかる。


「出掛けてたのか、サスケ」

「ああ」


小さくただいまと言ってサスケはななしに目をやった。


「来てたのか」

「ああ、お帰り弟くん」


お邪魔してるよー。片手を上げてへらっと笑う。サスケはああ、と軽く返事をしたあとしまったなと苦い顔をした。


「どうかしたか」

「いや…これ」


がさっと小さなコンビニの袋を差し出す。中を覗くとバニラ味とコーヒー味のアイスが2つ入っていた。


「散歩ついでに買ってきた」

「おー、気が利くね」


むくりと体を起こし袋からがさがさとバニラのアイスを受け取る。コーヒー味のアイスも差し出してきたが、そんなに気は遣うなとサスケに返した。


「いいのか、兄貴」

「構うことはない。悪いな」


申し訳なさそうにサスケは自室に戻っていった。アイスの蓋を開けてあ、と声を上げる。ななしは俺の方をちらりと見た。
気付いた俺は腰を上げて台所から小さな銀のスプーンを取り出し、ななしに渡した。


「さすがイタチ」

「どれだけ一緒に居ると思っている」

「そだねー」


ちびちびとスプーンでアイスを運ぶ。その度に冷たいと顔綻ばせるので俺もつられて頬が緩む。


「イタチもいる?」

「なんだ今日は機嫌が良いな」


アイスがあるとはいえ暑いことには変わりない。その唯一の冷却手段を俺に分け与えようというのだ。普段の彼女では有り得ない。


「まぁいいじゃん。食べる?」

「あぁ、貰おう」


その直後、ななしがスプーンを口に含めた瞬間を見逃すわけもなく、体を乗り出しお互いの唇を重ねる。ちゅっとリップ音を残した後、ななしの唇を一嘗めして元の位置に戻る。


「……………」

「甘かったぞ」

「………馬鹿」


俺に足蹴りをかましながらアイスを頬張るななしの頬が若干赤くて、俺はふっと笑った。夏は嫌いだがまぁ彼女の機嫌が良いのならまたそれもいいだろう。



順応な彼
(膝枕してやろうか)
(いやだ、やっぱり暑い)
(…少し悲しいぞ)



*
友達がイタチ書いてと言ってきたので書いてみたがダメだわからん。


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