鳴門短

□史上最悪の喧嘩ップル
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「死ねっ!!」

「お前がな!!うん!!」


史上最悪の喧嘩ップル



がっしゃーん。と良い音がアジト内に響いた。テーブルの上の皿が割れ、コップの中身がブチまけられる。取っ手は勿論、本体は粉々だ。
ソファーに座っていたイタチはまたかと溜め息を漏らして読み掛けの本を閉じた。


「おや、イタチさんどこへ?」


ちょうど入れ違うように入ってきた鬼鮫が早々に立ち去るイタチに尋ねる。


「あいつらだ。巻き込まれると面倒だからな」

「あぁ、またですか…」


すたすたと去っていったイタチを尻目に鬼鮫はその居間を見つめた。

居間では2人が見つめあって…否、睨み合っている。既に何回か動きはあったらしく、周りの家具やら何やらが悲惨だ。あそこで割れているのはサソリが傀儡に油が差しやすいと愛用しているコップじゃなかったか。


「いい加減にして下さいよ…。ななしさんデイダラさん」

「うるさい鬼鮫!!私今怒ってんの!!!」

「だからさ、しつけーんだよお前、うん!」


ぼんっと起爆粘土が2、3個爆発する。ななしはヒラリと交わし起爆札付きクナイをデイダラに向かって投げた。


「甘いなっ」


素早く起爆粘土を投げてクナイがそこに刺さる。空中で一瞬の閃光と爆発音が部屋を包んだ。


「ちっ……」

「そんなのが当たると思ってんのか?舐められたもんだな、うん」


その後ガキンと金属の擦り合う音が何度も響く。しばらく見ていた鬼鮫はやがて呆れたように部屋を出た。
しばらくしてまた居間に新たな人影。


「お前ら、いい加減にしとけよ」


ななしの投げたクナイを弾く。2人が目をやると弾いたであろうクナイをヒルコの先端で弄ぶその人物。


「何、サソリ」

「お前らうるせーんだよ、部屋まで響かせやがって」

「悪いな、旦那。ななしの奴が急につっかかってきやがるから」

「デイダラだっていきなり私に怒鳴り込んできたくせに」

「あ?」

「何?」

「止めろ、お前ら」


そろそろ怒りが頂点に上りそうなサソリにまずいと感じた2人はとりあえず黙った。

倒れたソファーを元に戻し、ななしとデイダラを隣りに座らせる。その向かいにサソリが座った。


「で、今日はなんだ」

「そんな私達が毎日喧嘩してるみたいに」

「してんだろーが、実際」


ちっと何故か舌打ちしたななしはさておき、デイダラに話を聞いた。オイラは悪くないと、デイダラもしぶしぶ語りだす。


遡ること15分前。


「ただいまー」

「今帰った」


仕事を終えたななしとイタチがアジトへ帰宅した。今日は急用の出来た鬼鮫の代わりでイタチと行ったそうだ。
ペインに仕事の報告をしたあと、居間で寛いでいた。


「帰ったぞ、うん」


そこにデイダラが帰宅した。こちらもななし達とすれ違いで仕事していた。


「あっ、デイダラおかえ……」


ななしが笑顔で駆け寄る。だが言葉を全て言い終わる前にななしの顔つきが変わった。


「どうした、ななし」

「ボロボロじゃない…」

「ちょっとしくじっちまっただけだ、うん」


デイダラは顔の擦り傷を擦り、これくらい大丈夫なんだけどな、うん。と笑って見せたがななしは許さなかった。きっとデイダラを睨み付けぐいっと顔を近づける。


「何やってんのよ馬鹿デイダラ!!何で私を呼んでくれなかったの!?」

「なんでって…」

「デイダラが怪我するなんて、それほど危ない仕事だったんでしょ!?」

「いや、うん。だからお前が怪我するのは嫌だから…」

「馬鹿!馬鹿デイダラ!!私の気持ちも知らないで!!!」


その言葉にデイダラもぴくっと眉を吊り上げた。


「おい、ななし」

「何よ」

「それはオイラの台詞だって知ってるか、うん」

「は?」


だから、とデイダラも叫ぶ。


「オイラのこととやかく言うけどよ、お前はどうなんだ」

「どういう意味よ」

「オイラが何も知らないと思ったか!お前だって何オイラを差し置いて他の男と仕事行ってんだ!うん!?」


びしっと効果音混じりにデイダラは椅子に腰掛け静かに本を読むイタチを指差す。この騒ぎに動じることもなくページを捲るイタチに若干の苛立ちを覚えるデイダラだがななしは依然として強気な態度である。


「それは仕方ないでしょ、鬼鮫が急用だって言うから」

「お前だけ仕方ないで片付けられると思うなよ!」


「もう、うるさい」

「先にとやかく言いやがったのはお前だろ、うん」

「何よ」

「やんのか」

「私に勝てるの?」

「お前こそ、オイラに勝ったことあったか?」





こうして冒頭の争いが繰り広げられ今に至るわけである。
一通り説明し終えたデイダラは思い出したのかムスッとした顔でサソリの言葉を待った。


「お前らが馬鹿なのはよくわかった」

「馬鹿って…」

「私達は本気なのよ」


そういって再び睨み合う2人に溜息しか出てこないサソリ。


「そもそもななしは何に対して怒ってんだ」

「デイダラが一人で仕事行ったから」

「それだけか?」

「うん」

「そんなことで…」

「そんなことじゃないよ!傷だらけだったんだから!!もしデイダラが私の知らないとこで死んじゃったらどうするの!!」

「そうか。で、デイダラはなんだったんだ」


これ以上聞いてたら気疲れどころでは済まなさそうだ。ななしの話も、デイダラの話も。めんどくさいものに顔突っ込んじまったと後悔しながら、サソリはさっさと部屋に帰りたい一心でデイダラに促した。


「オイラはななしが傷ついて欲しくないから危険な仕事はさせたくねぇんだよ、うん。だから一人で仕事に行った」

「で?」

「そのくせにななしがイタチと一緒に仕事行きやがるから」

「お前ら本当に馬鹿だな」


吐き捨てた一言と2人の眉間の皺を残してサソリは立ち上がった。


「武力で喧嘩する前に口を使え、喧嘩ップル」


ぽかんとする2人にフッと笑ってサソリは居間を去った。
しばらくの沈黙。時間というものは不思議なもので黙っていても流れていく。そして自分達の高ぶった気持ちさえも落ち着きを取り戻させるのだ。


「…」

「…あのさ」


お互いの沈黙は30秒程だったが、耐え切れなかったのかデイダラが口を開く。


「その…悪かったな…うん」

「デイダラ…」

「でもななしがイタチ…他の男と仕事行ったのは許さない」

「…ごめんね」

「あそこまで心配してくれたのは嬉しいぞ、うん」


さすがオイラの女だ、と笑えばななしもにかりと笑った。
こうして今回の痴話喧嘩は幕を閉じた。

やれやれと影で息をつくサソリは安心したように歩き出す。
こいつらは本当に飽きないカップルだな。度は過ぎているが、可愛い後輩には変わりない。親みたいだなと、変な心境に苦笑してふと足を止めた。


「おっと、傀儡の手入れしなくちゃな」


ふと居間の残骸に目がいった。
サソリのその瞳に映る粉々になった愛用のそれ。原因は無論。


史上最高の馬鹿ップル
(おいななし、デイダラ)
(うん?どうした旦那…)
(覚悟は良いな?)
(え…ちょっ…何……うわぁぁぁああ)



*

長くなってしまった。あと台詞多いorz
命がけの喧嘩ップルも実際は嫌ですね笑
サソリはいい人です((


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