鳴門短

□素直になれない僕達は
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素直になれない僕達は


教室でいつものようにななしとくだらないことで喧嘩して、いつものように爪を立てずにバシバシと体を叩いただけだった。はずなのに。


「………」

「…お、おい」


今日はどういうわけかたまたま長い爪がたまたまななしの腕に当たって、たまたま引っ掻いてしまった。
その時のななしは悲痛の顔を浮かべて、すぐさまその腕を押さえる。小さく「痛っ」と声を上げたのも俺は聞き逃さなかった。

その後、ななしは無言で教室を走り去り、残された俺はいのやサクラ達の冷たい視線に刺されながら後を追うハメになった。



そして、今に至る。
ななしが走った先は保健室で、追いついた時には俯いて一人でイスに座っていた。


「先生は?」

「………いないよ」


絞り出したような震えるか細い声に俺の喉がぐっとつまる。こいつ、泣いてたな。ななしの腕は引っ掻いた傷の部分がじわりと赤く腫れていてとても痛々しい。

先生が居ないから自分で手当て出来ないようだ。俺は棚を漁り、消毒液と包帯を取り出してななしに向かい合うように座る。
顔を上げたななしの目に涙はなかったが、赤くなった目元にやっぱり泣いてたんだと確信した。


「ほら、見せろ」

「…ん」


差し出された腕を手に取り、空いた手で消毒液を持つ。


「染みるけど我慢しろよ」


一拭きかければぎゅっと目を瞑り痛みに耐える。相当染みるのか拳を作り腕を震わせた。
その間にも包帯を巻いていきピンで止める。


「ほらよ」

「下手くそ」


悪態つくその顔は笑ってなくて、冗談で言ったつもりはないらしい。さっきの罪滅ぼしというか、罪悪感から行ったことだが少し腹立った。


「巻いてやったんだからお礼くらい言えよな」

「それならキバは謝ったらどう?」


ずいっと包帯の巻かれた腕を見せつけるように差し出した。確かに所々浮いてたり捩れていたり、我ながら下手だとは思う。

それよりも俺の謝罪を催促してくるななしになんだか悔しく感じて、俺はつんと顔を逸らした。


「謝らないの?ねぇ」

「お前がお礼言ったら言ってやるよ」

「自分のことを棚に上げてそういうこと言うの」

「てめっ…」

「被害者なのは私だけど」


さっきから痛いところを突かれてだんだんと反論の余地が無くなってきている。若干ななしが勝ち気な顔に見えてさっきよりさらに苛立った。


「さっきまで泣いてたくせに」

「誰がそうさせたのよ」


泣いてたことをあっさりと肯定したことに少し驚く。ななしは俺にあまり弱みや涙とか見せないし、仮にあっても認めようとはしない。なにかと都合が悪いらしい。俺だってそうだし。こいつに泣き顔なんざ見られたら一生ネタにされる。
だがこうも簡単に認められては、皮肉で言ったつもりの俺は次に言うはずの言葉が出てこない。
何も言えない俺を見てさらにななしは言葉を重ねる。


「結構深かったよ」

「……」

「痕残っちゃうかも」

「……」

「責任取ってもらえるのかなぁ?」

「……わかったよ」


ニヤリと口角を上げたななしに俺は観念した。これ以上喋らせても俺の身が狭くなるだけだ。とりあえずこいつを黙らせねばと、口任せに言葉を発した。


「責任とってお前を嫁にもらってやる」

「………えっ?」


きょとんとした顔のななしにつられて俺も首を傾げる。
あれ、俺今何て言った?


「……………っ」


いきなりななしの顔が真っ赤に染め上がる。


「あっ……」


俺も自分の言ったことを思い返し、即座にその意味について理解し、ななしと同様に顔に熱が走った。



時々ものすごく
素直になる僕達

(ジュース奢るとかで良いのに)
(お、俺の嫁じゃいやだってのかよ)
(………別に)



*

ネタが無くてちみちみ書いたらわけわかめになった/(^p^)\
気付かないうちにそういうこと言って、のちのち気付いてアーッみたいなの好き←

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