その他小説

□I want you.
1ページ/1ページ




「驚いたわ」


ロンがチェスに強いのは知ってた。
けれど、1対1でやってみると、改めて強いというのが分かるわね。

勉強では貴方に勝ってるのに、チェスでは惨敗。




「だって貴方、全然チェスうまそうに見えないもの」


そしたら貴方は気を悪くしたのかしら、うるさいやい と言ってくる。
子供みたい と返したら少し睨まれた。だって本当に子供みたいなんだもの、



窓の外は もう真っ暗、沢山の星がちりばめられている。
子供の頃、お父さんとお母さんに教えられた"星の歌"を思い出した。懐かしいわぁ…


そんな中、貴方は私に不利すぎる事を言ってきた。




「ただチェスするだけってのもつまんないし、掛けでもしない?」


「私、勝てない勝負は引き受けないのよ」

チェスで貴方に勝てるわけがないでしょう、なんて言っても貴方は中々言う事を聞かないから。
仕方なく引き受けてあげる。


「じゃあ、勝った方が負けた方になんでも命令できる ってどうかしら?」

ロンは見事に私の提案に乗った。







結果、見事に惨敗。
まぁ こうなる事ははじめから分かってたんだけど、

少しドキドキしながら 何がお望み?と聞く。


「うーん…… じゃあ、この夜空に浮かぶ星全部ちょうだい!」


なんて事を、笑顔で窓の方を指さしながら言うもんだから、貴方バカ?なんて思っちゃった。


「いくら魔法を使ってもこればっかりは無理」

「ちぇ」



本当は、「君が欲しい」「デートしよう」「キスして」なんてお願いが聞きたかったのよ。
けど、奥手なのかなんなのか 貴方は私をいっこうに求めない、

貴方は私なんて要らないの?




なんだか無性に悲しくなってきた。
貴方は私を求めない。それが優しさなのか恥ずかしさなのかなんなのかさっぱり!

能天気な貴方に向かって、なんで って呟いた私の声は 貴方には聞こえてなかったようで。



「星くれないならもう、この特権いらないや。」

掛けを持ち出したのは貴方なのにそれってどういう事なの?って思ったのが顔に出た気がする。



「勝った方が負けた方になんでも命令できる、だなんて素敵な特権じゃない。私ならフル活用するわ」


「貴方が欲しい」「デートしましょう」「キスして」 沢山のお願いが頭に積もる。私にはこんなに欲があるのに、



「じゃあ、君にこの特権があるとしたら僕に何をお願いする?」


なんて聞く鈍感ロンには一発いっとかないと、ということで普段は言わない事を言ってみるわ。



「I want you.」




そしたら顔を赤くして、僕も だなんて言うのよ。
それだったらはじめから私を求めてよ!不安になるじゃない!









I want you.
( 貴方が欲しい )

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ