PORTGAS・D・ACE小説入口1

□大切なもの
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うっ・・・・・

頭がグラグラして・・気持ちわりぃ・・・






ガバッ・・・!!

上半身を無理矢理起こす。









―――夢。





最高に寝覚めが悪ぃ・・・

俺ぁ・・なんて夢を見てんだよい・・・





俺の可愛い弟分が死んだ夢を見た。




悲しくて・・・吐きそうだよい・・・・








胸クソわりぃ気分を変えるために、俺は甲板へ向かった。

まだ、朝日が昇らない時間の空気は透明でひんやりと、上へ続く出口から船内に流れ込んでくる。











−−−「よお、マルコォ!」


朝もやの中に差し込んだ、うっすらと柔らかな光が、甲板に座り込むその声の主を照らしていた。


「エース・・・どうしたんだよい。こんな早い時間に。」


「こいつがよォ、朝、おれの部屋の窓にぶつかってきたんだ。」



しゃがんだ彼の両手が、一羽のカモメを大事そうに包んでいた。



「かりぃ脳震盪だろうね。」

エースはそう言うと、いつもの太陽のような笑顔で、抱いたカモメの口ばしと自分の鼻の先をくっつけた。



カモメは暫く彼に見守られていたのだろう、少しずつ頭がしっかりしてきたようで、ギャッと一声鳴くと、その長い羽を大きく伸ばして羽ばたいて見せた。




「よしよし!もう大丈夫そうだな」


エースはカモメを腕に乗せたまま立ち上がり、その腕を空高く伸ばした。




「そらっ!!飛べ!!」




空から降る柔らかな光の中のその光景は、彼の身体がまるでそのまま、羽ばたいて行くカモメと一緒に消えてしまいそうに見えた。



「エース!!!」




おれは思わず叫んだ。









「なんだよ?マルコ。そんなこえぇ顔して・・・。」


「・・・テメェは、優し過ぎるんだよい!」



「マルコ?」



吐き捨てた言葉を残して、俺は部屋の方へ歩き出した。




暫く俺の背中を不思議そうに見送っていたエースが、突然、俺の背中にぶつかり、腕を首に巻き付けて来た。



「オイ!なあ、なんか変だぜ?どうしたんだよ。」


「・・・なんでもネェよい」

俺はクスッと笑って、エースの溝落ちに軽いパンチを入れた。

無邪気なてめぇの顔見たら、何も言えなくなっちまったぃ。



「あのカモメ、喰うんじゃなかったのかよい。」


「ああ、いいんだ。此処には喰いもんがたくさんあるからな。」


そう言ったエースの目は、まるで純真な子どものように透き通っていた。







「へへへっ。そういやおれ、腹減った!今から朝飯食いに行こうぜ?マルコ!」



「―なあ、エース。」


「なんだ?」


「――可愛い弟分にちょっと・・・キスしたくなっちまった」


屈託無く笑いながら俺の顔を覗き込むエースの頬っぺたに、ぶちゅっとキスをくれてやった。



「げっ!!!なっ!なにすんだ!テメぇ!!!」


エースは俺の身体からバッと離れて前を走り出した。




「エロパイン!!」



・・・なんだ、そりゃ。

まったく、おめぇは・・・ガキかよい。
年上をからかってんじゃねえぞい!












――「オイッ!早く行こうぜ。マルコ!」


振り返って嬉しそうに笑うその顔に、今登り始めた朝日が当たっていた。


















――愛する家族、誰一人欠ける事なく、なんて、俺らの選んだ道にはありえねぇ話だ。



いつまでも変わらず同じであることなど、この世にはどこにもない。

今、俺の中にくすぶる不安感は何故だかいつまで経っても消え失せることは無かった。



俺はただ・・・

無機質な世の中では生きて行けねぇ、この透き通った目を持った奴らのことが愛しい。そして、その俺達の家族をずっと守っていきてぇと、改めて思った。









――――by marco.

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