Drama

□おばけ屋敷
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『よろしくね大澤くん』


大澤「ああ」




桜先生・仙波さんペアがトップバッターとなり次々とみんなが入っていきついに私たちの番になった




大澤「どうした」


『えっ、何が?』


大澤「顔色が悪い」


『そ、そんなことないよ!ほら、行こう!』


大澤「・・・・」




とは言ったものの、圧倒的に恐怖心の方が勝っちゃうわけで

やばい、怖い
これ以上進めない


私は嫌がられるかと思い黙っていた「服の袖を掴ませて」というお願いをしようとした



『大澤くん』


大澤「なんだ」


『その、大澤くんが良いならでいいんだけどさ』


大澤「・・・」


『いや、やっぱりなんでもない』



なんとなく言い出せなくてなんでもないって言っちゃったけど

大澤くんがこっちを見てる姿が視界に入る

やめておけばよかった、この沈黙が気まずい



すると大澤くんが手を差し出してきた


『・・・?』


どういうことかわからなくてキョトンとしてると

しびれを切らしたようにその手で私の手を包んだ



大澤「怖いんだろ」


『えっ』


大澤「見ればわかる」



謎なとこ多いけど
こういうところ優しいよね



『ありがとう』


そう言うとフッと笑い、手を引き歩き出した

笑ったその横顔に少しドキッとしてしまった


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『大澤くんはさ、おばけ怖くないの?』


大澤「おばけ大好き」


『へぇ・・・そうなんだ』



やっぱり謎の多い人だ



暗闇の中をゆっくり歩き続ける

大澤くんが手を繋いでくれているおかげで
不思議と恐怖心は薄れていった




ガサガサ



『えっ、なんの音?』







「うらめしやあああああああ!!!!!!」






『きゃあああああああ!!!!!!』


大澤「・・・・」



驚く私をよそに、顔色一つ変えずじっとおばけを睨む大澤くん

よほど怖かったらしくおばけ役の子が泣きながら逃げて行った



『うわっ』


おばけがいなくなったことで少し落ち着き腰が抜けてしまった



すると繋いでいたはずの手がぱっと離れ私の背中に回された



大澤「大丈夫か?」


倒れそうになった私を大澤くんが抱きとめてくれていた


『あ、ありがとう・・・・!』


お礼を言いつつ顔を上げると思ったよりも近く、ドキッとしてしまった

きっと私の顔は真っ赤に染まってるだろう



大澤「立てるか?」


『うん、大丈夫そう』



そう言い腕の中から出て立ち上がると
大澤くんは再び私の手を取り歩き出した




その後も何度かおばけは出たが全員が泣きながら逃げていった


怖いんだね、大澤くんの威圧が



そしてあっという間に出口にたどり着いた



『あ、終わった』


大澤「あまり怖くなかったな」


『まぁ、みんな泣いてたもんね』


大澤「なんで泣いてたんだ?」


『えっ』



嘘でしょ、無意識なの?


『さぁ・・・なんでだろうね』





ふと、まだ手を繋いでいることに気付いた


『あ!大澤くん、手、ありがとうね』


そう言うと、どちらともなく自然と繋いでいた手が離れた

わざわざ手を繋いでくれていたことに申し訳ないと思う反面
少し名残惜しいという気持ちがあった




大澤「また入るときはいつでも言え」



言われたことに対し
キョトンとする私を見下ろし



大澤「俺が守ってやる」




そう言い頭をポンポン、と2回撫でると
そのままどこかへ歩いて行った







今わたしの顔は、再び真っ赤に染まっているんだろう
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