REBORN!
□ヴァリアーのお姫様!2011
1ページ/8ページ
チュンチュン、と小鳥がさえずる。
窓からはやわらかな日射しが差し込み、“春の匂い”がほんのりと甘く薫る、心地良い風が舞い込んだ。
「…う゛…ん…」
久し振りの深い眠りから目覚めて、それでもまだ足りないかのように、スクアーロは焦点の合わない目をこすりながらあくびをした。
「今日オフ…だったよなぁ」
時計の針は9時を少し過ぎたくらい。任務がなければあと一時間は許されるだろう。
「もう一眠りといくか…」
毛布を引っ張り上げて目を閉じると、再び意識が沈んでいくのがわかった。
(こんなゆるい一日も良いもんだ…―――)
そして丁度スクアーロの意識が完全に落ちようとした時。
バタバタバタバタバタバタ
(……うっせぇなぁ…)
胸あたりまで上げていた毛布を頭まですっぽり被る。全身が自分の体温で包まれ、素晴らしく居心地が良い。
今度こそ二度寝に入る態勢が整い、スクアーロの瞼が上下し始める。
(ん………―――)
バタバタバタバタバタバタ―――ダンッ!!
「おっはよースクアーロっ!!」
「もういい時間だよ。起きたらどうだい」
扉から威勢良く入ってきたのは、ベルとその腕の中に大人しく収まっているマーモンだった。
「…あれ、なんかまだ寝てるんですけど」「疲れてるんじゃない?色々と」などとひそひそ言い合っている。
「今日が何もない日なら放っておくところだけど。仕方ないね」
「じゃ、俺が起こしてやろっと。王子やっさしー」
「…ベル、じゃあその右手のは何だい」
マーモンの指摘に、ベルは楽しそうに笑った。
右手に持ったナイフを弄びながら、そりゃあさ、と続ける。
「チャンスじゃん。今なら案外綺麗に華麗に刺さっちゃったりして。ししっ♪」
「今日くらいはやめてあげたら?」
「…う゛おぉい、丸聞こえだぞてめぇらぁ…」
二人が部屋に入ってきた時にはさすがに覚醒していたスクアーロには、ベルとマーモン(主にベル)が勝手な話をしているのが全て聞こえていた。
もちろん、二人も気づいていてからかっていたに過ぎないが。
「あーあ、起きちゃった。そのまま刺されてれば良かったのに、つまんねー」
「あ゛あ!?」
「まあ落ち着きなよ、二人とも。ベル、目的を忘れない」
マーモンがふよんと浮いて、スクアーロとベルの間に割って入る。
一番幼い容姿をしたマーモンが、というのも滑稽な図だが、実際、ここに来たのにはそれなりに大切な理由がある。
あ、そうだった、と当初の目的をすっかり忘れていた様子のベルは、未だベッドの上で不機嫌そうなスクアーロの手をぐいぐい引っ張った。
「何でもいいけどとりあえず起きてよスクアーロ」
「つーか任務ねぇのかぁ?」
「…ないに決まってるだろ?君も鈍いね」
「マーモン、それはどういう「はーやーくー」
なかなか動こうとしないスクアーロに苛立ったベルが質問を遮ってさらに強い力で引っ張るものだから、愚痴をこぼしながらスクアーロは立ち上がった。
「…ったく、おかげで眠気が飛んでっちまった」
「それは良かった」
そう言って、スクアーロの後ろに回り込んだマーモンもまた、頭をぐいぐい押すのだった。