長い旅路

□追いかけて、歩いて。
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「十代目!!おはようございます!」
勢いよく頭を下げ、聞き漏らすことのない大きな声で挨拶をした。
「お、おはよ。」
引き気味に返すツナ。
「よ!今日は早ぇんだな二人共。」
気さくにかかる声、山本だ。
「あ、山本。おはよ。」
「・・・テメーこそ早ぇじゃねぇかよ。何やってんだ。」
(チッ!わざと時間ずらして来たっつーのに・・・。)
険悪な顔で睨む獄寺に気づかないのか、山本は何のうかがいもなく話を続ける。
「今日は俺、朝練の鍵当番なんだよ。試合近いから先輩達前より来んの早くてさ。」
「試合近いんだ。山本はやっぱり出るんだよね?」
「あぁ!ウチのガッコでやるんだ。見つけたら声かけてくれよ?」
「うん。チビ達連れてったら喜ぶかも。」
「おー。皆で来てくれな。」
「じゃあ今日も遅くまで?」
「いや、今日は自主練なんだ。顧問いないらしいから。」
たわいもなく会話を続ける二人の後ろで、タバコをふかしながら不満だらけの表情で歩く獄寺。
気にくわない奴は気にくわない。ツナが優しいのは全く以って問題ナシだが、山本はツナと仲が良いだけにより敵対心を抱いてしてしまう。
「んじゃな。」
「うん。また後でね。」
そう、仲が良くて今もまた後で、なんて・・・“また”?またって・・・また、だよな。
「獄寺君?・・・どうしたの?」
立ち止まった獄寺に気づき、振り返るツナ。
「いえ、あの・・・山本と、何か約束でも?」
「山本?」
「あ!えと、ぼーっとしてて話聞いてなくて・・・!すいませんっ、別にいいんス。さっ、十代目、教室行きましょう!」
その場を笑ってごまかし、ツナを急かした。
「ちょ、待って獄寺君!押したら転ぶって、うわ!」
背中を押す力についていけずにツナの足が縺れた。
「え、っ!?」
その足は獄寺の足にも絡み、互いがバランスを取れなくなってそのまま重力と体重に任せ倒れた。
「っつつ・・・じゅ、十代目っ大丈夫ですか!?」
獄寺のかした手を取り、ふと見上げたツナの目の前に顔があった。
(ぅわっ・・・ごっ、獄寺君の顔ち、ち、近っ・・・!!)
「う、うんっ・・・。ご、獄寺君こそ怪我ない?」
「俺なんかは全然平気っス!俺・・・十代目にお怪我をさせるところでした・・・スミマセン!!」
ガバッと土下座をする行為。転んだくらいで大袈裟な・・・。
「だ、大丈夫だって。土下座はしなくていいから早く中入ろ?」
「はいっ。」
こんな毎朝。心配してくれるのは嬉しいけど、素直に喜べない。何か、詰まってて。モヤモヤ・・・した。
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