けいおん?〜今の自分にできること〜
□揺れる心のムスタング
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会場は一瞬で彼らの奏でる音に染まったが、
曲の間奏中にメンバー紹介をすませ、
演奏後に簡単に今回の学フェスを説明したかと思ったらすぐにステージを後にした。
演奏は終わったが静寂は来ず、
変わりに緊張の糸が切れたかのように辺りからザワザワと声が湧き上がってきた。
利吉「彼らは?」
そのざわめきの中に利吉の一声が混じった。
友久「あん?あぁ、あの人たちは“サバイバルカントリー”。この町出身のプロさ。」
利吉「なるほど。道理でな。」
利吉は分かりきったような顔で下を向いた。
友久「な〜んだよその『全部お見通しでした〜』みたいな生意気な顔。」
どこかに期待を隠しながら友久は冷やかした。
利吉「見通すも何もない。ただあのように要領よく進行するには高校生では経験的に無理がある。」
友久「あ、そっち?(演奏で気付いて欲しかったな…)。」
そこは期待を裏切る男、
片桐利吉。
当然友久の思い通りにはならなかった。
利吉「?そっちもどっちもないだろ。」
友久「もういいからあっち行け。」
利吉「了解した。」
友久「おいおいおい、ホントに行くな行くな!ほれ、もう次始まんぞ。」
利吉「む、だな。」