書いたもの

□また今日も
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パピヨンが、血を吐いた。
よくあるコトだ。今も昔もそして恐らくこれからも、彼はその臨死の恍惚とともに生き続けるだろう。
何も変わらない。
ただ一つを除けば。
今と昔とで違うコト、それは、彼の吐いた血を綺麗に拭き取りその口元を拭う者が居るか否か、というコトだった。
ヴィクトリア=パワード。
自身の父親や他のホムンクルスと共に月へ移り住んだハズのその少女がここにくるまでのアレコレはまたいつか気が向いたらくわしく書くとして、今は話を進めたいと思う。
さあ血を吐いたパピヨンだが彼は何故ヴィクトリアが自分の吐いた血を拭いているのか、理解できずにいた。
この風景は彼の研究所、つまり今彼が血を吐いている此処で既に十回程度は見られている光景。
「べ、別に用があるわけじゃないけど、ただその、暇だったから少し様子を見に来てあげただけよ。」と、いつも同じ台詞を口にしつつやって来るこの少女(生まれてからもう百年以上経ってはいるが)は何も吐血に限らず事有る毎に彼の世話を焼いていた。
何故彼女が自分の世話をしようとするのかが理解できない事への怒り、もともと世話をされるのは好きじゃなかったはずなのに何故か彼女を拒絶できない自分への怒り。
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