【短編】

□The Drifting Snow Hid Away My Pain
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「割っちまった…勿体無ェ」
「んな事言ってる場合か!!今日はもう寝ろ!!」

どうしようもなく込み上げて来る怒りのままにゾロが怒鳴ると、サンジは急に顔を背けた。

「…つーか背中が引き攣っちまって動けねェんだな、これが」

ゾロは舌打ちをした。
苦笑するサンジに手を伸ばす。

「そういう事はもっと早く言え」
「え…うわ、ちょ…おい!?」

そのままサンジを抱き上げると、ソファに移動して寝かせてやった。
毛布が無いので手で背中を擦る。

「な、何だ」
「暖めろってチョッパーが言ってたろうが」

サンジは目を丸くした。

「やけに優しいな…まさかお前心配してんのか?」
「…当たり前だろ。てめェ人の事何だと思ってやがんだ」
「迷子毬藻…」
「ぶっとばすぞてめェ。これでも血ィ通った人間だ」

サンジは笑った。
その笑顔に胸が締め付けられる。
人の気も知らないくせに。
死ぬかも知れなかったくせに。

「なァんだ…」
「何だよ」
「仲間だって認めてくれてんだな…ちゃんと」
「…あァ?」
「お前おれにだけあからさまに態度違うからよォ…」
「……」

だって、只の仲間なんかじゃない。
惚れてんだ。
気付けよ。
鈍過ぎなんだよ、てめェ。

「…そりゃこっちの台詞だ。とにかくもう寝ろ。皿はおれが拾っとく」
「悪ィな…あァ何か…」
「今度は何だ」
「お前の手…暖かいな…へへ」

手が止まる。

「デカくて安心する…」

そう言い残すと、サンジは寝息を立て始めた。

「…そうかよ」

胸が掻き毟られる想いだ。
自分が一体どれ程の精神力を用いてその痩躯をこの腕の中に閉じ込めてしまいたい衝動を押し殺しているか、この男に思い知らせてやりたい。
ゾロはサンジの背中を擦りながらぼんやりと、おれが瀕死の重傷を負う度にこの男もおれと同じ気持ちを味わえば良いのに、と思った。





end
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