【短編】

□her powers of observation
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「ナミさん?」
「おい、ナミ」

ちょっと、止めてよ本当に。
何なの?その示し合わせたみたいなタイミングでの第一声は。

「どうかしたの?」
「お前眉間に皺寄ってんぞ」

本当に、もう──。

「ナ──」
「解った!!解ったからもういいわ!!」
「「…へ?」」



──しまった。



居た堪れなくてついやっちゃった。
あんまり勢い良く立ち上がったモンだから、二人ともポカンとしちゃってる。

「ナミさん…?」
「い、いいのよ本当に!!邪魔者はもう退散するから!!どうぞ!!」
「「──」」

どうぞって、一体何をどうぞなのよ私!?
もうやだ、きっと二人とも呆れて──。



「…サンジ君?」



呆れて──あれ?



「な、な。な…な──」
「顔、真っ赤よ…?」
「…お前の所為だろ」
「え?」



って言うか、ちょっと。
何でゾロまで薄ら頬染めてるの?



「ちっ…違うんだナミさん!!」
「突然変な事言うなよお前…」
「……」



やだ、何か、どうしよう。





二人共、可愛いんだけど──。





何?この感覚。
どっちかと言うと好意と呼ばれる感情の様な、自然と笑みが零れ落ちそうになるこれは──。



──あ。



「あはは…何だ、そっか…」
「「?」」



そういう事だったのね──。



解ってみたら、拍子抜けするくらい簡単な事じゃない。
『大人』を感じさせる時の貴方が嫌いなのは、自分が『子供』だって思い知らされてしまうからだったんだわサンジ君。
だって、現に今の貴方は好きだもの。

相手の事で見っとも無く右往左往するのは、どうやらお互い様だったみたいね。
まァ、人間なんだから当たり前よね。
顔を真っ赤にして狼狽える貴方はまるで子供みたいで、そうさせた私は優位に立ってる自分を大人だと勘違いする事が出来る。

嗚呼、何だ。
これじゃ只の駄々っ子じゃない私。
本当にコドモだわ。



「ああああのねナミさん!!」
「サンジ君」
「なな何だい!?」
「もう周知の事実なんだから、今更焦らないでよね」
「しゅ──」
「ゾロ」
「…何だ」
「ごゆっくり」
「……」

やだもう、二人共面白過ぎる。
お陰で何だかすっきりしたわ。
今夜はぐっすり眠れそうな気がする。
そう思ったら笑いが込み上げて来た。

「待ってナミさん!!」
「はいはい、おやすみサンジ君。じゃあねゾロ」
「…おう」
「ナミさ──」

このまま去るのが惜しい気持ちも多少ありつつラウンジの扉を閉めると、早速サンジ君がゾロに当たり散らす声が聞こえ始めたけど、気にせずに階段を降りる。
足取りも軽く部屋へと向かいながら、改めて思った。





悪足掻きしないで認めてしまえば、何ていう事はない事実。
すんなりと受け入れられたんだから、今度からは自分と上手く付き合えば良いだけの事。
仕方無いからあの二人には、一応感謝しといてあげようかしら。
折角楽しい遊びも見付けた事だしね。

幾らでも寂しさを紛らわせてくれる事に溢れてるこの一味に居られる私は、本当に幸せ者だわ。
そんな風に思えるのも、あいつのお陰なのかな。
そう考えたら、バカップルにアテられてヤキモキするのもこの船の醍醐味なのかもしれないわね。





本人に面と向かってなんて、絶対に言えないけど。



有難う、ルフィ。





やっぱり、あんたで良かった──。





end
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