唯と梓の部屋

□歌に込めた想い
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唯さんのマンションの部屋の前に来る。
そっと合鍵で鍵を開ける。
なんだか悪い事してるみたいで思わず声を潜めてドアを開く。
「・・・おじゃましまーす。」
これってアレだ。寝起きドッキリなんかの雰囲気に近い。
部屋は唯さんの甘い匂いで溢れてて、なんだかわくわくする。

「・・・どう?痛くない?」
あれ?唯さんの声?誰と話してるんだろ?
「う・・・うん。平気。おねぇちゃん、優しくしてね?」
こ、これって・・・う、憂?
「ふふっ、任せて。私、これでも結構上手いんだから!」

ちょ、ちょっと待って。
何を優しくするんですか?
そして、何が結構上手いんですか?
私は思わず玄関の物陰に身を潜める。

「あ、ああん、おねぇちゃん、そこだめぇ・・・くすぐったいよぅ。」
「ふふふ、憂・・・ここ、キモチいい?キモチいいでしょ?」
「あっ・・・もうちょっと・・・もうちょっと奥・・・」
「奥ってここのこと?ここ、コリコリってしてあげるね。大丈夫、全部私に任せて?」
「ああっ・・・おっきいのくる・・・おっきいのくるよぅ。」

思わず顔が熱くなる。
え、え、え?
ふ、二人とも、何してんの、昼間っから!
・・・じゃなくて!
・・・これって唯さんの浮気?しかもよりによって憂と?
私は思い切って物陰から飛び出した。

「ちょ、ちょっと待ったぁーっ!」

「ほーら、憂、大きいの取れたよー・・・て、あれ?梓?」
「あ、梓ちゃん、いらっしゃーい。」

唯さんは憂をひざまくらしてて。手には耳掻き。
・・・なんてお約束な。耳掻きであの雰囲気を作るとは恐るべし、平沢姉妹。

「ちょっと待ったって・・・何?」
唯さんが首を傾げる。
「い、いやいやいや。何でもないんです、何でも。」
私は両手をぶんぶん。
「あ、あー、私、ご飯作ろうと思って、色々食材買ってきたんです。どうせ唯さん、冷蔵庫空っぽだろうと思って・・・」
慌てて冷蔵庫を開ける。
・・・あれ?なに、この充実ぶり。
卵からお肉から野菜から、およそ考えられる食材は揃っている。
「・・・ご、ごめんね。梓ちゃん。」
「そ、そのー・・・おねぇちゃんがおでん食べたいっていうから・・その・・・」
憂が申し訳なさそうに目を逸らす。
その先には、おでんなべがぐつぐつと音を立てている。
「も、もうちょっと煮込んだらお大根おいしくなると思うんだけど・・・」
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