唯と梓の部屋

□君の名を呼べば Side:梓
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「んはぁ・・・ああぅん・・・」
私は熱いため息をついて。
ごろり、と重たいカラダを仰向けに横たえる。
「ねぇ、梓?」
唯さんがぺろぺろ、ってほっぺを舐めてくる。
完全におなかを空かせたライオンの瞳。
くるるるっ、て喉を鳴らす音が聞こえてきそう。
「あっ、あっ、お誕生日のプレゼント、でしたよねっ。」
私は少し休ませてほしくって。
でも唯さんに『少し休ませて』なんて言ったら、余計に責められちゃうに決まってる。
だから慌てて話題を逸らした。
「え?あ、むー・・・」
唯さんは残念そうに唸る。
こういう時の唯さんは、ほんとにケモノみたい。
「うーん、プレゼント、ですか。どうしよっかなー。」
猛獣使い歴約1年の私は、餌をヒラヒラさせて、気を引く。
私の可愛い猛獣さんは、ふんふんってノってきて。
「うん、梓。欲しいもの、ある?」
目をキラキラさせて訊いてくる。
・・・相当、考えてくれたんだろうなー。
そんで今もまだ決められないに違いない。
サプライズが大好きな唯さんがこうして訊いてくること自体かなり珍しい。
私は愛しくてたまらなくなって。
おばかさん。
あなたがくれるものだったら、何だって。
私は嬉しいに決まってるのに。
唯さんは年上のひとなのに。
たまに本当に可愛い。頭を撫でてあげたくなっちゃう。
私は絶対に言えない言葉を心の中でそっとつぶやいて。
枕を唯さんに見立てて、かいぐりかいぐりってしてあげる。
「・・・梓?」
おあずけを喰らった猛獣さんは、しびれを切らして。
『もう食べてもいい?もう食べてもいい?』って目で訴えてくる。
私は慌てて考えるふりをして。
「あ、あっあー・・・うーんと。その、ですねぇ・・・」
唯さんはじれったそうに。
「だって!すごいことなんだよ、梓!私達、2人とも18歳になるんだよ!」
「・・・ほんとに結婚できる年、になるんだよ?」
「えっ・・・」
私は思わずきょとん、として。
「そ、それだったら、私達、二人共女の子ですから、16歳で結婚できますけど・・・。」
「え?・・・」
今度は唯さんの目が丸くなった。
「そ、そんなこと分からないよー?梓が男の人扱いかもしれないじゃん!」
「扱い、ってそんな・・・唯さんの方が年上ですし、やっぱり・・・」
私はおずおずと唯さんの瞳を覗き込んだ。

「・・・えっちする時も攻めるの、唯さんですし。」

唯さんは真っ赤になって。
「その・・・こないだ、梓が酔っ払って、その・・・襲われちゃったコト、あったでしょ?」
言いにくそうにぼそぼそとつぶやいた。
「あの時。すごく、ね、きゅんってしたよ。そんで・・・ドキドキした。」
唯さんはそれっきり。真っ赤になって俯いてしまった。
「う!そ、それは・・・」
お酒のせいで、大胆になっている時の痴態を思い出した私も、真っ赤になって小さくなる。
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