ぷらいべーと

□とある金曜日に起きた出来事
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後輩子ちゃんは、ぐい、と私の腕を引っ張って。
「誰っ?誰なんですか、あの人っ。」
ラムトニックが効いている頭を揺らされて、私は惑乱する。
「だ、誰って・・・ここのママさんで、困った時、色々相談してる人だよぅ。」
「あの人はだめです。危ないです。」
後輩子ちゃんはマジメな顔をしてつぶやいた。
「だめって?美咲さん?ないない。あの人が女の子ナンパするのはお店に入れる時だけだから。大丈夫。」
私はケラケラと笑って言った。
「ほんとですか?でもナチュラルに抱き付いてたし、こしょこしょ、って耳打ちするし。」
耳打ちされた内容を話すわけにもいかない私は。
「あ、あー。まぁ、大丈夫。大丈夫だよっ。」
あいまいに答えて、また後輩子ちゃんに睨まれる。
「おまたせー!」
そんな事とも知らず、美咲さんは陽気に戻ってきて。
「はい!私からプレゼント、よ?」
ちらり、と後輩子ちゃんを見てから。
「このカクテル。キス・ミー・クイック、っていうの。」

私の鎖骨をつつ、って撫でて。
「『今すぐ私にキスして』って・・・意味。」
わざと私の耳元に吐息がかかるように囁く。
「ねぇ。早く飲んでみて?」
またいつものように私をからかっているだけなのに、後輩子ちゃんは言わんこっちゃない、とばかりに私を睨みつけて。
「先輩!私のも、飲んで下さい!」
・・・えー?
後輩子ちゃん、この人はからかって面白がってるだけだってば。
「うふふ。んー・・・」
もー!美咲さん、酔ってるー!
美咲さんはえらく色っぽい表情で唇を寄せてくる。
「先輩!」
思いつめた口調で後輩子ちゃんが腕を引っ張る。
私はあきらめて。
「・・・えいっ。」
かぱーん、かぱーん、ってその2杯分のカクテルを空けた。
その情熱的なキスは。
えらく刺激的な味がした。
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