ぷらいべーと

□出張中に起きた出来事
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ヨットの係員の人が飲み物の注文を取りに来る。
私はシャルドネを頼んで。
「・・・あ。あー・・・」
彼女は言葉が分からないみたいで困った顔をしてる。
・・・あ、そーか。ツンツンなんじゃなくて、英語苦手なんだ。
「啤酒?葡萄酒?可乐?橙汁?」
私は単語だけ知っている中国語を並べてみた。
彼女は理解したみたいで、係員の方をみてワインを注文した。
「・・・多謝。」
彼女は中国語で『ありがと』って言って、ようやくにっこり笑った。
「うふふ。どういたしましてっ。」
私はその笑顔に舞い上がって。
「なんだか不思議だねっ。日本と中国にいるだけで、私達、出会わないはずなのに、こうしてアメリカで出会ってる。」
「ほんとね。すごい偶然、かも。」
くすくすくす、とおかしそうに笑う。

「うん。やっぱり笑ってる方が可愛いよ。」
私は精一杯の男前の顔で。
「お嬢さん。偶然、じゃなくて、人はそれを運命、って呼ぶんだぜ?」
精一杯気取って言ってみた。
「???」
私の渾身の告白も彼女に伝わらなかったらしく、彼女はきょとん、としてた。
・・・うーん、強敵だな。

紙コップのシャルドネがやってきたので、受け取って彼女に渡してやる。
「アリガト・・・」
彼女は今度はぎこちない日本語で言った。
「日本語、知ってるの?」
「少しだけ・・・発音、合ってる?」
「うん。私の中国語より、うんとマシだよ。」
こつん、って紙コップを併せて。
「乾杯(かんぺー)」
って、私が中国語で言うと、
「カンパイ・・・」
って、恥ずかしそうに日本語で返す。
可愛い。お尻も可愛いけど、はにかんだような笑顔もとっても可愛い。
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