ぷらいべーと

□出張中に起きた出来事
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アルカトラズ島・・・誰も脱獄できない監獄が迫ってきて。
彼女がふいに私を見上げて。
「あのね。私、好きな人とロスに住んでたの。」
「・・・え?」
突然切り出した彼女に、今度は私がきょとん、とする番だ。
「中国から、彼について来たんだけど。私、英語が下手だから、辛くって。」
彼女は大きく伸びをして。
「彼とケンカしちゃった。」
「アメリカって・・・ほんとに監獄にいるみたい。」
彼女はアルカトラズを見てぽそり、とつぶやいた。



顔を背けている彼女の表情は伺うことはできなかったけど。
彼女の細い肩は泣いていた。
・・・ちくしょう、リア充め、爆発しろ。
私は心の中でつぶやいて。
彼女のきれいな黒髪を撫でてやった。
「詳しい事は分からないけど。」
「私だったら、好きな人と一緒なら、監獄にいても幸せだなぁ。」
彼女は驚いたように私を見上げる。
「彼のいるアルカトラズと。彼のいないこのヨットと。」
「どっちがいいの?それはあなたが決めることだよ?」
・・・あーもう。
そんなに可愛らしく、目を潤ませて上目づかいで見上げるんじゃないっ。
お・そ・わ・れ・たいのっ?

「・・・うん。・・・アリガト。」
私がそんな事を考えているとは、おそらく露知らず。
またたどたどしい日本語でお礼を言って。
にっこりと笑った。

なんかたまらなく後輩子ちゃんに逢いたくなった。
・・・ただ、この事は彼女には内緒にしておこうと思う。(笑)
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