さわ子と紬の部屋

□いんふる!
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それはある寒い金曜日の朝。
起きてみると、なんだかふらふらする。頭が痛い。体の節々も痛い。
「・・・こ、これは。今、流行のアレ、かな。」
病院に行ってみると案の定、インフルエンザだった。
学校に電話して、学年主任に報告する。
学年主任は疑わしそうな声で。
「まぁ、また急病なの、山中先生。」
「この間も急病だったわよね?意外に体弱いのね?」
たらり。確かにこの間、仮病を使って、ムギんちに特攻したっけ。
しかも軽音部の3人も同時にサボり。
疑われても仕方ない。
「あ、あのー・・・今回は本当に急病でして。ハイ。」
「『今回は』?『本当に』?」
あわわわ。熱に浮かされた頭でこれ以上何も話さない方がいい。
「いやいやいや。とっとにかく、今回は後で診断書を持って行きますから。」
慌てて電話を切る。

「・・・さてと。」
残念だけどムギにも電話して今週は会えないって伝えなくっちゃ。
携帯でムギに電話する。
あれ?・・・出ないな。
「ムギ・・・私よ。インフルエンザにかかっちゃったの。ちょっと熱もあるし、うつっちゃうとまずいから今週末は会えそうにないわ。ごめんね。」
弱々しい声で伝言に残して電話を切る。
ふー・・・。
ベッドに潜り込んでじっと目を閉じる。
熱に浮かされながら、ようやくうとうとし始めた頃。
遠くでヘリの音がする。
パラ・・・パラパラ・・・パラパラパラ・・・
あれ?・・・なんか近づいてない?
パラパラパラ・・・バラバラバラバラバラ・・・
それはどんどん近づいてきて。
ババババババババ・・・
マンションのすぐ横で、映画の効果音のような、ヘリがホバリングする時の音。
私の部屋の窓が外の風圧を受けて、ガタガタガタ!と悲鳴を上げる。
アクション映画でもなかなかないシチュエーション。
今にもロケット弾が打ち込まれてきそうだ。
普通の人ならここで外に飛び出して何が起こっているのか確認するのだろうけど。

私はなんとなく外で何が起こっているのか想像がついた。

やがてヘリの音が遠ざかるのと時を同じくして。
ガチャガチャガチャ!私の部屋のドアの鍵が慌しく合鍵で開けられて。
「・・・さわ子さんっ!大丈夫っ!?死んじゃいやっ!」
ムギが真っ青な顔で飛び込んできた。
可愛らしい薄い黄色のワンピース。
・・・降下をサポートしたヘリの乗組員は相当気を使っただろうな。
ちょっと目を上げただけで、ぐったりとベッドに臥せっている私を見て。
ムギは慌てて携帯を開く。
「もしもし!もしもし!斉藤?スペシャル医療チームはいったい何をしているの?手術中?中断させなさい!レベル5の緊急事態だと伝えて!」
「あー・・・ごめん、ムギ。今日、それにツッコむ元気ない。」
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