さわ子と紬の部屋

□初めての、コト。
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「ねー、のど飴、もらっていい?」
彼女は黄色いレモン味ののど飴をつまみながら言った。
「あんた、ほんとにそれ好きよね。いいわよ、好きなだけ。」
「わーい。」

クリスティーヌこと河口紀美。
Death Devilのギタリスト。
私のライバルであり、親友であり、相談相手。

「で?今日はどうしたのよ。アポなしで来るなんて珍しいじゃない。」
「・・・キャサリンっ!」
その彼女が珍しく私に頭を下げて。
「何も訊かずに、この箱、預かってっ!」
かしゃん、と音を立てて机の上にミカン箱よりは小さいくらいの箱を置いた。

ここは私の部屋で。
「な、なぁに?これ。」
突然やってきた彼女は。
「だから、『何も訊かずに』って言ってるじゃんよ。」
いつになく真剣な表情。
私はゴクリ、と唾を飲んで。
「・・・爆弾?」
「・・・外れ。」
「・・・拳銃(チャカ)?」
「・・・あたしはどこのテロリストだ、いったい。」
私は間髪いれず。
「エロテロリスト?」
紀美は呆れた顔で。
「相変わらずセンスないわね。今はぺロリストの方が新しいのよ?・・・って、誰がぺロリストだっ!」
相方のキレのいいノリツッコミ。
でも私はごまかされず。
「で?なんなの、この箱。」
「あ、それ、聞いちゃう?聞いちゃうんだ、へー。」
紀美は真面目な顔をして髪をかき上げた。

「パンドラの・・・箱よ。」

私は委細構わず、箱に手をかけた。
「最後には希望が出てくるんでしょ。じゃ、開けてもいいわね。」
紀美は慌てて箱を押さえて。
「嫌っ。さわ子のえっちっ。」
私は思わず手を引っ込めて。
「な、なぁに?えっちなもの、入ってるの?」
「ふ、ふ、ふ。バレちゃあしょうがない。」
紀美はニヤリと笑うとすぅっと顔を寄せてきて。
「な、なによぅ。」
怯える私の耳元で囁く。
「・・・オトナのお・も・ちゃ。」
「え?え?えええっ!」
私は思わず耳をおさえて。
「お、オトナのおもちゃって、つまり、その、アレよね?」
顔が熱くなってくる。
「・・・えっちの時に使う、アレ?」
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