みんなの部屋

□Still Crazy!!!
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Please don’t say you are lazy, だって本当はCrazy。

伝説のバンド、放課後ティータイム。

全米を震撼させたガールズバンドは、あっという間に時代を駆け抜け、あの雷雨のラストライブを最後に電撃解散した。
雷雨にも関わらず、野外ライブを決行せざるを得ない超過密スケジュールは、メンバーの体力も気力も削り切っていた。
雷雨で使い物にならない澪の代わりに全曲を歌った唯の声はほとんど出なくなっていたが、ファンの悲鳴に近い声援と雷雨の雷鳴はそれを気にさせなかった。

ピカッ!ゴロゴロドシャーン!
さすがに野外ライブのテントを直撃した雷は観客をパニックに陥れた。
「り、りっぢゃん・・・ぼーだべ・・・わだし・・・ぼうごえが・・・げん・・がい・・・」
(字幕)「り、律っちゃん・・・もうだめ・・・私・・・もう声が・・・限・・・界・・・」
「だから無理だって言ったじゃないですか!ああっ私の超高級アンプがっ!」
「素敵・・・私、落雷の中で演奏するのが夢」ドカーン!
テントに燃え移った炎が見えると同時に何かが爆発した。
逃げ惑う観客。
「くそっ!ライブは中止だ!みんな、とにかく安全なところへ逃げろ!後で連絡する!」
「私だって無理だって言ったんだよ!だけど・・・だけど」
「会場のキャンセル料が部費では全然足らなかったから・・・つい・・・」
「・・・超過密スケジュール、全然関係ありませんね・・・」

群集を押し分けて澪の姿を探す。
「くそっ!・・・澪−っ!どこだーっ!」
澪はエリザベスを抱きしめて倒れていた。
蒼白な顔。閉じられた瞳。流れる黒髪。美しいその姿はまるで生きているようだった。
「澪・・・ごめん。こんなことなら、もっと優しくしてやれば良かった・・・」
そっと動かない澪の体を抱き起こす。
「澪。お願いだ。目を開いてくれよ。お願いだから・・・もう一度・・・笑ってくれ。」
私は天を仰いで叫んだ。
「・・・みーおーっ!」

・・・澪は落雷で気絶していただけだった。

最後はみんなでお茶を飲みながら話をして、その日を限りに解散することを決めた。
あんなに苦いダージリンは後にも先にも飲んだことがない。
女子高校生5人が勢いのまま、突っ走った結果。
放課後ティータイムは燃え尽きてしまった。

あれから、もう7年になるだろうか。
世間はすっかりそのバンドの名前を忘れていた。
そう、私以外は。
放課後ティータイムがバラバラになってしまった後も私だけは。
澪命と書かれたドラムスティックを手放せずにいた。
日ごと募る思いは私の胸を焦げ付かせていた。
そんな時。昔、お世話になったレコード会社から電話がかかってきた。
「今はリバイバルブームなのよ。昔のバンドのサウンドがかえって新しいって言われてるのよねー。HTTがもし復活できるなら、ぜひウチでやらせてほしいの。あ、もちろん衣装は私が」ブツッ。
後半はともかく、願ってもない申し出だった。
着ないぞ。さわちゃん、絶対着ないからな。全米を震撼させる衣装だけは。
私はさっそく元メンバーに連絡を取った。
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