みんなの部屋

□正解!(Excellent!)
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「・・・もしもし、和?」
「私よ、姫。そっちは朝8時だよね。おはよう。」
和は今、アメリカの北西部の町にいる。
飛行機でほぼ丸一日、時差にして15時間。
「そう。相変わらず寒いの?」
「・・・クレージーよ。この間はマイナス30℃だったの。鼻をね、きゅ、ってつまむと、そのままくっついちゃうのよ。」
和はおかしそうにくすくすくすって笑った。
「そっちはえーと・・・17時?でも、まだ1日前なんだよね。」
・・・遠いなぁ。私は心の中でつぶやいた。

和がアメリカの大学に留学して、もう3ヶ月。
彼女がいない生活には全然慣れないけど。
こうして1週間に1度、電話で話す。
「元気にしてた?・・・そう。そうそう、元気って言えば、さぁ。こないだ話した子猫がね?」
「ああ。あのいきなり引っかかれたってコ?」
なんてことない、日常を話して。
和が相槌を打ってくれるだけで、こんなに嬉しいなんて。
「なによ、それ。相手は子猫なんだから、そんなにムキにならなくても。」
「えー。もうこれはヤツとの戦争なのよ。絶対に負けられない戦いがそこにはあるんだから。」
くすくすくすって笑い合う。
和が笑ってくれるのがこんなに嬉しいなんて。

ああ。私は今、恋をしているんだな。

「・・・どうしたの、姫。泣いてる、の?」
黙り込んでしまった私を気遣って。
「う、ううん。なんでもない。」
涙声にならないように懸命に声を絞り出す。
「あはは、ちょっとテレビ面白いのがあって、気を取られちゃった。ごめんごめん。」

そう。あの時もそうだった。
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