みんなの部屋

□天国への扉 Knockin' on Heaven's Door
1ページ/31ページ

「のんのんのっきおなへぶんずどー。」
私と和が手に手を取って米国に降り立ってから早3ヶ月が過ぎようとしていた。
「のんのんのっきおなへぶんずどぉぉぉ。」
私は唯一歌えるようになった『天国への扉』を歌いながら、ご機嫌で二人の愛の巣をお掃除していた。
「うふふ。私、新婚さんみたい。」
とさ、とベッドに横になって。
大好きな和の匂いに包まれる。

「愛してる、姫。世界で一番あなたが好きよ。」
熱く囁きかける旦那様の声を思い出す。
ぎゅ、って。
和にきつく抱きしめられた時に押し付けられる彼女のカラダの柔らかさ。
ときとき、と静かに脈打つ彼女の鼓動。
ふわり、と香る、彼女の好きな香水の香り。
「ねぇ。・・・したいの。してもいい?」
囁くようなかすれた声。
ギラギラと私を求めてくる瞳。
肌を滑る指と舌。
私は愛しい人をカラダに思い出して、きゅ、って自分の肩を抱いて余韻に浸った。

ああ。早く帰ってこないかな、和。

きっと主人の帰りを待つ子犬ってこんな感じ。
和は今、大学に行っていて。
私はようやくパートタイムの清掃の仕事を見つけて、夕方に帰ってくる和とすれ違い。
でも英語が不自由な私でもできる仕事はそれしかなかった。
「・・・淋しく、ないもん。」
私は和と一緒に寝てるベッドでころころしながら、つぶやいた。
そう。
私が深夜に帰ってきて。
朝まで一緒にいるベッドだけが、二人の共有空間。

和はどんなに翌朝早くても疲れていても、あのギラギラした目で私を求めてくる。
私に、その・・・月に一度のお客様が来ていても。
和は私の急所を知り尽くしていて。.;
決してそこだけは触れずに私を頂点に導いてしまう。
そして、そんな時、和は決まって私のお尻を狙ってくる。

「・・・い、嫌っ。そこだけはダメ!」
でも、私は決してそこだけは許していない。
「どうして?・・・欲しいの。」
くりくりくり。
「だ、だって。汚いよ、そんなとこ。」
そんな時、私は懸命に和の手を取って、代わりにちゅぴちゅぴって指を舐めてあげる。
「ね、お願い。・・・怖いの。そんなとこ、されたら、壊れちゃいそう。」
見上げる私に和は、ぐぅ、と唸って。
「仕方ないわね。姫がいいって言うまで待つわ。」
お預けを食ったわんちゃんみたいな表情。
「ありがと。ふふっ、和、やさしー。」
そんな繰り返し。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ