ぷらいべーと

□2回目のバレンタインに起きた出来事
1ページ/14ページ

それはバレンタインデーのこと。
私と後輩子ちゃんはちょっとだけデート。
私はその後、会社に戻らなきゃいけなくて、でも、せっかくのバレンタインだから、ちょっと遠めの喫茶店。
静かで、照明も落としてて、いい雰囲気のお店。
コーヒー1杯500円のお店はビジネス街ではあまり受けないらしくて、お客さんもまばら。
後輩子ちゃんはきれいにラッピングされた包みを取り出して。

「はいっ。先輩。本命チョコですっ。」

私は唖然として。
「・・・うん。あり、がと。」

後輩子ちゃんは、にぱ、って可愛く笑って。
「うふふ。ね、食べてみてください。」
「う、うん。でも、いいの?」
私はもったいなくて、そっと包み紙も破かないように包みを開けて。
「てっきり今年も板チョコかと思ってた。」
中から現れたのは、プロのショコラティエが作ったみたいなトリュフ。

「・・・いいんです。」
後輩子ちゃんはまっすぐに私を見つめて。
「あなたが好き。私のこの気持ちは変わらないもの。私の本命チョコ、貰ってください。」
あまりにもまっすぐ後輩子ちゃんの好意が伝わってきて。
「・・・うん。」
私はこの時、断りきれなかった。

「ちゃんと高級チョコなんかじゃなく、先輩の好きな明治のチョコレート湯煎して作ってますから。先輩専用ですよ?」
「ありがとう。きれい過ぎて食べるの、もったいないね。」
ホワイトチョコがコーティングされたもの、粉砂糖がまぶされたもの、ココアパウダーがまぶされたものなどが丁寧に丸く丸められていて。
「もう。先輩専用なんだから、食べてみて?」
後輩子ちゃんは、ひょい、と一つをつまみ上げて。
「はい。先輩専用ですよ?」
ぱく、と咥えて、差し出す。
「こっ、後輩子ちゃん?」
私はきょろきょろとあたりを見渡して。
「はやふー。ほへひゃいまふよ?」
誰も私達を見ていないのを確認して。
「・・・もう。誰かに見られちゃっても知らないんだからね。」
かぷ、って後輩子ちゃんが咥えてるチョコを食べようとした瞬間。
くい、って抱き寄せられて、私達の間でチョコが溶けていく。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ