律と澪の部屋

□一番のサポーター
1ページ/12ページ

「・・・ねぇ、律。今度の土曜日、予定ある?」

部活が終わった帰り道。私は他の軽音部のみんなと別れてから律に声をかけた。
「澪・・・!なに?デートのお誘いっ?」
「う、うん。まぁ、そんなとこ。」
律はがばっ!と私に抱きついてきた。
「予定、ないない!あったとしても澪とのデートより優先する用事なんてないよ!」
「で?どこ行くの?何か計画あるの?」
「う、うん。あのね、サッカー見に行かない?」
「サッカー・・・?」
律は微妙な顔をした。
「わ、私の好きなサッカーチームの今シーズン最終戦なんだよ。」
「たまたま知り合いの人が行けなくなって2枚チケットがあるんだけど・・・」
「もし、嫌じゃなかったら・・・」
最後は消え入りそうな声になってしまった。
だめかな。
私は目をぎゅっとつぶって律の反応を待った。
くしゃっと髪を撫でられた。
「こーら。そんな顔すんなよ。」
私がそっと目を開けると。律がにっこり笑ってた。
「澪とデートだったらどこでもいいんだよ。チケット余ったってことはおごり?」
「あ、う、うん。そう。」
「ひゃっほう!ラッキー!お小遣い苦しいとこだったんだ!」
律は踊り出さんばかりに喜んでくれた。

きっと私に気を使ってくれてるんだろうな。

そう思ったけど、せっかくの律の気遣いをムダにしないように気付かないふりをした。
「感謝しろよ!本当なら絶対手に入らないプラチナチケットなんだぞ!」
「へぇ。澪の好きなチームって人気あるの?強いの?」
「まぁ、そこそこだよ。でも人気があるから、強いから応援するんじゃないんだ。」
「ふーん?じゃあなんで?」
「敢えて言えば好きだから。理屈じゃないんだよ。」
「・・・うん。分かる気がするよ。」
律はいたずらっぽく笑いながら抱きついてきた。

「だって、それって正に私が澪に感じてるのと同じだからな!」

律の顔がすっと近づいてきて。
すばやく私の唇を奪うと律はぱっと離れた。
いつの間にか、私の家と律の家との分かれ道。
「楽しみだな、土曜日!またな!澪!」
私は唇を押さえて、律の柔らかい唇の感触を反芻した。
「ああ!また明日!」

えへへ。優しいな、律。
色々サッカー観戦のこと、教えてあげて楽しんでもらおう。
そんで、一緒に応援したりできたらいいな。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ