律と澪の部屋

□My Better Half
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「り、りり、律。今から言うこと、嫌だったらそう言えよ?」
昔、律が言ってくれたみたいに。今度は私が勇気を振り絞る。

・・・とはいうものの。思った以上に私の勇気ってすぐ萎える。もうダメになりそう。
「澪・・・それって・・・」
「いいから!約束して!」

ここまで言って、ハッと気づいた。
そういえばあの時、甘々のラブソングが流れていたっけ。
そうか・・・あの時、律・・・それであの選曲だったんだな。

今は何も用意する暇がなかったけど・・・
「約束?う、うん。まぁいいけど。」
ムードも何もないけど・・・もう止まれない。
「り、律っ!」
「は、はいっ!」
「私っ・・・私ね・・・」
「うん・・・」
律がじっと私の目を覗き込む。
吸い込まれるように私は言う。
「私、律の事が好き。愛してる。」
「はい・・・えええええっ!?」

ここまでで私の勢いが尽きてしまった。
真っ赤になって俯く。見ると律も真っ赤になって俯いている。
「その・・・嫌か?」
私の問いかけに律の目が泳ぐ。
しーん・・・二人だけの空間に静寂が辛い。
ああ、もう。いっそ逃げ出してしまいたい。
「・・・あのさぁ、澪。」
「・・・あ、あのさ、律。」
二人とも沈黙に耐えかねたように切り出した。
・・・えーと。
「な、何、律。」
「・・・澪こそなんだよ?」
ごくん。自分で唾を飲む音が聞こえる。

「正直に言うよ。・・・律が記憶を失う前、私と律は恋人同士だったんだ。」
次の言葉を言ってしまったら、もう戻れないかもしれない。でも言わないと。
言わないと私と律の未来には進めない。

「でも今、律はそんなこと覚えてないだろうし、気にしなくていいんだぞ。嫌だったら嫌って言って。」
「そんで・・・今言ったこと、忘れて。もう二度とこんなこと言わないから、友達でいさせて。」

忘れて。言ってしまってからたまらなく辛くなった。
伝えることは伝えた。これが私の精一杯。
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