律と澪の部屋

□映画のあとで。
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「あ、これなんかいいんじゃない?」
その日は2人して映画を観ようって言って。

「ほら、『私たちはいつまでも放課後です。』だって。」

何も決めずに映画館に行ってみた。
澪は私が指したポスターをちらり、と見て。
「う、うん。それもいい、んだけど。」
目を宙にさまよわせた。
「なんか、観たいの、あるの?」
「うん・・・あっ、あった。」
私は澪が指差すタイトルを見て。
「あ、これ。前に観たいって言ってたもんな。」
澪が楽しみにしてたラブストーリー。
「覚えててくれたの?」
私はここぞとばかりに、胸を張って。
「当たり前だろ。私を誰の恋人だと思ってるんだ?」
「じゃ、これにしようよ。上映時間もちょうどいいみたいだし。」
ん?と右腕を差し出す。
澪はすっかり感激の面持ちで。
「うんっ!ありがと。」
私の差し出した右腕にすがってきた。
私より背の高い彼女はちょっと身をかがめて。

「・・・大好き、律。」

私の耳元でささやいた。
思わず振りむくと真っ赤な顔で目をそらす澪。

ほんとは恥ずかしくてしょうがないくせに。
ほんとは勇気を振り絞って言った一言。
ほんとは嬉しくて躍り上がりたかったけど。
くすぐったくて、照れくさくって。

「惚れ直しただろ?」

男前な笑顔を向けるに留めておいた。
なのに、澪は目をそらしたまま。
首をふるふると振って。
破壊力抜群な微笑みで。

「・・・ううん。ずっと惚れっぱなしだもん。」

・・・これだからコイツにはかなわない。
私はニヤニヤ笑いを噛みしめて映画館へ入った。

「えへへ。これ、絶対律と観ようって決めてたんだ。」
澪は嬉しそうに私の背中を押して。
キャラメル味のポップコーンにコカコーラを買って。
「へへっ。そんなに期待してるとハズれるぞー?」
ふにゅん。
背中に柔らかい物が当たったと思ったら。
「大丈夫だよ。律と一緒だもん。折り紙つきだよ?」
澪の香水のいい匂いがした。

・・・なんだ、なんだ?このごほうび的展開は?
しかもそれを自覚していないとこが恐ろしい。
・・・大丈夫かな、私の理性。
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