律と澪の部屋

□あなたにお熱。
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「・・・律、いるー?」
私は合鍵で勝手にドアを開けて恋人の部屋を覗いて。
最近、自分の部屋にいるより律の部屋にいる方が長い。
「・・・りーつ?」
・・・あれ?この時間は講義ないはずだけど。
律がいなくても、私は律の匂いがするこの部屋が好きだった。

「いないの、かなー?」

私には私だけの秘密がある。
律がいない時だけ。
律の匂いのするベッドでおふとんにくるまって、幸せを味わう。
・・・そんで。
すんすんって律の匂いを嗅いでると・・・。
・・・思い出しちゃって。
ちょっとだけ悪戯したくなっちゃう。
「・・・ちょっとだけ、だもん。」
バレちゃったら、恥ずかしくて死んじゃうかも。
でもいつ律が戻ってくるか分からない、っていう事実が私の心を粟立たせて。
自分でも信じられないくらい、興奮してくる。
「ちょっと、だけ、だよー・・・」
小声で言って、何故か抜き足差し足、音を立てないようにベッドに忍び寄る。
いつものようにベッドに忍び込もうと思ったところで。
「あれ?・・・律?」
ベッドで小さくうずくまる律。
「寝てる・・・の?」
さら、と髪を掻きあげてやったところで、彼女の頭が異常に熱いことに気づく。
「み、みおぉ・・・」
彼女は捨てられた子猫みたいに弱々しく私の名を呼んで。
「くるしいよぉ・・・」
潤んだ瞳で私の顔を見上げた。

「り、律?どうしたの、これ?」
私は慌てて律の長い前髪を掻きあげて、おでこに触れてみる。
「すごい熱・・・ちょっと待ってて。」
勝手知ったる律の部屋。
私は薬箱を取り出して。
「あ・・・ひえピタ、切れてる。」
・・・そう言えば夏に「これがあれば熱帯夜も大丈夫!」とか言ってたっけ。
ほんとにだらしないんだから。
なんとかアイスパックを見つけて、氷のうを作る。
「ほら、律。これ。」
ベッドに持ってって、律の額に押し当ててやる。
「・・・あ、ありがとー。」
氷のうの向こうで律がちょっと微笑んで。
私もちょっとほっとして、律の汗ばんだ髪を掻き上げてやる。
律はちょっとくすぐったそうにして。
「ねぇ、みぃおー・・・」
甘えた声。
私は弱ってる律がたまらなく愛しくなって。
「・・・なんだ?できれば一眠りしたほうがいいぞ。」
優しい声で応えてやる。
「うん・・・寝るまで、手、握ってて、ほしい。いい?」
私は左手で律の右手に指を絡めて。
「いいよ。あたりまえ、だろ。」
すると律はぴと、って私の手をほっぺに当てて。
「へへへ。澪の手、きもちいい。」
きゅ、って弱々しく握ってくる。
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