律と澪の部屋

□君といつまでも。
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・・・コンコン。
ある寒い冬の夜。
私は幸の部屋をノックして。
「ねぇ。幸、いるー?ちょっと課題で分かんないとこ、あるんだけど。」
・・・返事がない。
「・・・いないのかな。」
困ったなぁ・・・課題、明日までなんだけど。
私はなんの気なしにドアに耳を付けて中の音を探ってみた。
・・・か、ダメだっ。
・・・じゃん、楽しそうだよ。
そして、ふふふって笑い声が聞こえたような気がして。
今度ははっきりと幸の声。
「ごめーん、澪ちゃん、今開けるねー。」
私はほっとして、ドアから離れて。
「う、うん。ごめんね、こんな遅くに。」
かちゃ。
ちょっと間があって、ドアが開く。
「なぁに?澪ちゃん。」
「遅くにごめん。明日までの文化人類学のさ、課題、あ、る・・・よ、ね。」
私は課題のメモからちょっと顔を上げた瞬間、目を奪われてしまった。
幸はワイシャツ一枚羽織っただけの下着姿。
「ご、ごめん。もう寝てた?」
なんだか匂い立つように艶かしい。
「ううん。ベッドで横になってただけだから。」
一際白い太ももが無造作に剥き出しになっていて。
その合わせ目には黒い・・・オトナのショーツ。
「・・・で?課題のこと?」
幸は私の瞳を舐めまわすように覗き込む。
「うっ、うん。そ、そのぉ・・・課題のさ、ここんとこの意味なんだけど。」
・・・女子大の寮の中だから、いいのかなぁ。
薄暗い廊下に部屋の中の明かりが逆光になって。
でも私が幸の方をまともに見られないのは明かりが眩しいせいだけじゃなかった。
もう。・・・こ、こっちがドキドキしちゃうよ。
「ああ、ここのとこ。難しかったけど、多分、こうだと思うの・・・文化人類学はそもそも観察と比較に基づいて・・・」
私は幸が教えてくれるのを上の空でメモしながら。
横目でチラチラと幸の妖艶な姿を盗み見してた。
「・・・って感じじゃないかなぁ。どう?」
「あっ・・・うっ、うん。」
耳から入ってきた物はメモしたけど。
私の頭の中は部分的に見える幸のえっちな姿と。
ドア越しに聞こえた「ふふふっ」って秘めるような笑い声。
「・・・澪ちゃんのえっち。」
幸はくすくす笑いながら、軽く手でその黒い三角の布を覆った。
「ちっ、違うよ、そんな・・・」
頬がかぁっと熱くなる。
私はイタズラを見咎められた子供のように目を逸らして、口ごもる。
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