律と澪の部屋

□いつもずっともっと一緒の・・・
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・・・こんこん。
軽音部の部室の扉が今日十何人目かの来訪者を告げる。
部室にいるのは私達HTTのメンバーに加えて新入部員の梓、純、憂ちゃん。恩那組の晶、菖、幸。
その全員に緊張が走る。
「・・・はぁい。どなた?」
私が投げやりに応えると。
「あ、あの。た、田井中律さん、いらっしゃいますか?」
扉の向こうで可愛い声がする。
「あー。うー・・・」
私はあいまいに呻いて。
私の恋人の方を見る。
ムギのお茶の準備を手伝っていた澪は、ぴた、と動きを止めて。
ぎぎぎ、と振り返ると満点の微笑みを顔に貼り付けて。
「・・・おい。律。お客さんだぞ。」
「ひ、ぃっ・・・」
ソファに座っていた梓が耐えかねて、悲鳴を上げかけた口を慌てて両手で抑える。

気まずい沈黙。

「あー。うん・・・」
私はどうすることもできず、今日、十数回めの訪問に応えるため、のそのそ、と扉ににじり寄る。
扉から顔を出すと、きゃー、という嬌声が聞こえて。
「田井中さんっ!お誕生日おめでとうございますっ!」
差し出されたのは小さな包み。
見れば、3人の1年生らしい女の子。
「あああの、あの、私達、ライブで見た時から素敵だなって思っててっ。」
「ぜひ、お誕生日をお祝いしたいな、って。」
「唐突なんですけどっ、受け取っていただけますか?」

いやー。初々しいね。可愛いね。
「あ、うん。」
私はちら、と部室の中に視線を送って。
「・・・ありがと。嬉しい、よ。」
小さな声でぼそぼそとつぶやく。
彼女達は、ぱぁ、って笑って。
「「「ありがとうございます!」」」
って、お辞儀をした。
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