唯と梓の部屋

□歌に込めた想い
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Side:唯梓
・・・・・・・・・・
唯さんと恋人になってから3ヶ月。
大学に入って1人暮らしを始めた唯さんから、私は部屋の合鍵をもらっていた。

へへへ、これって恋人への信頼の証だよね。

私は時間があれば、陽にその鍵を透かしてみては悦に入っていた。
「うふ。うふふふ。」
私はその度、なかなかニヤニヤ笑いを止められなかった。

だけど、今は両手に抱えた荷物の中にたくさんの食材。
「ふふっ。こっそり行って食事作って待ってるんだ。唯さん、驚くかなぁ。」
今はちょうど大学に行っていて、いないはず。
唯さんに内緒で行くのはこれが初めてだけど、鍵をもらう時にいつでも入っていいって言われてるし。
これ、ひょっとしなくても、もう半同棲ってこと・・・だよね?
「えっと・・・どうやって唯さんを迎えようかな?」
唯さんの部屋へ行く道々、想像してみる。

・・・例えば新婚さんみたいに。
「お帰りなさい、あなた。お風呂にする?ご飯にする?」
「それとも、わ・た・し?」

・・・いやいやいや。
それはない。それはないでしょ。
それはほら、澪先輩みたいな人が裸にエプロンとかでやったらアレだけど、私じゃ、ねぇ。

・・・じゃあ、メイドさんみたいに。
「お帰りなさいませ、ご主人様。お鞄をどうぞ?」
「今日も存分にご奉仕させていただきます。」

・・・ごっ、ご奉仕って。ご奉仕ってぇぇぇぇぇ。
唯さんにそんなこと言っちゃったら、どんなことさせられるか分からない。
・・・あんなコトとか・・・あんなトコをアレさせられちゃうとか・・・
だめだめだめ!そんなのまだ早いよ!けっ、健全なおつきあいをしなくっちゃ!
何より、さわ子先生がいないのに、衣装どうすんの!

・・・やっぱりいつもの私で行こう。カムバック、私。
「唯さん!また冷蔵庫空っぽじゃないですか!冷凍庫にはアイスばっかりだし!」
「アイスばっかりじゃなくてお野菜も食べなきゃダメって言ったでしょ!」
で、ちょっとそっぽを向いちゃったりして。
唯さんが「ごめんね、ごめんね、梓ぁぁぁ」って涙ながらに謝ってくる姿が目に浮かぶ。
きっと「ねぇ、ねぇ?もうしないから・・・許して?」ってまた抱きついてくる。
いつもの、あの子犬みたいな甘えた瞳で。
素直じゃない私は、唯さんのいい匂いに包まれて蕩けてるのに、仕方なく許すフリ。
「しょ、しょうがないですねぇ。今日は私が栄養たっぷりのごはんを作っておきましたから一緒に食べましょう?」
「ありがと、梓ぁ!やっぱり私には梓しかいないよ!」
「でも、ご飯の前に梓を食べちゃおうかな〜?」
「え?ゆ、唯さん、そんな・・・あ、あああん、ご、ごはん冷めちゃいますぅ・・・」
「梓のココが熱くなってるのを鎮めるほうが先だよ?・・・いただきまーす。」

・・・なんて。
私は一人で妄想しつつ、いやんいやんと身悶えた。
・・・はっ。道行く人が不審者を見る目で見てる。
私は顔が熱くなるのを感じながら急ぎ足で唯さんの部屋へ向かった。
でも、コレ、悪くないかも。
冷めても電子レンジで暖めて食べられる料理にしよう。
「何にしようかな・・・やっぱり唯さんの好きなオムライスかな。」
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