唯と梓の部屋

□犬も食わない
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作者注:文章中「−−−−−−」の印は視点変更、「・・・・・・」は回想シーンの印です。


「もう!唯さんの分からずや!」
唯さんは、むっとした顔で目をそらす。
「・・・なにさ。・・・梓だって頑固者じゃん・・・。」
「もう!どうして分かってくれないんですか?」
「分からないよ!私は梓が好きなだけ!なんでそれが分からないの?」
ここはN女子大の軽音部部室。
つい声が大きくなって、いちゃいちゃしてた律先輩と澪先輩がソファの影から顔を出す。
「なんだ、なんだ?珍しいな。ケンカか?」
律先輩が聞いてくるけど。
「・・・だまってて下さい、です!」
「そーだよ!律っちゃんは黙ってて!」
「んま!この娘達ったら!いつからそんな生意気なクチをきくようになったのかしら!」
言葉とは裏腹に律先輩はとりつく島もない私達にそそくさと退散して。
「澪ママー。唯ちゃんと梓ちゃんが苛める〜!」
ここぞとばかりに澪先輩に抱きつく。
澪先輩はそんな律先輩を器用に脇に押し退けて。
「ほんとにどうしたんだ?普段はこっちが恥ずかしくなるくらい、いちゃいちゃしてるのに。」
「澪ちゃんには言われたくないよ!」
私もそこは唯さんに同意してしまって、思わずうなづきそうになる。
みんなが顔を見合わせたところで。
「ちゃんちゃらおかしいわね!」
ムギ先輩が一喝して。
「・・・お茶でもいかが?」
にこやかに微笑む。
修羅場はあっという間にティータイムになった。

「で?何があったんだ?話してみろって。」
律先輩が優しく聞いてくれてるのに。
私はぷぅ、とふくれたまま。
「・・・なんでもないです。」
唯先輩もそっぽを向いて。
「なんでもないもん。」
澪先輩は軽くため息をついて。
「ふくれ方まで同じなのに。何が食い違ったんだか。」
ムギ先輩がお茶を淹れながら。
「まぁまぁ。お菓子でも食べたら仲直りするわよ。ねぇ?」
「しません!」
「しないもん!」
律先輩は苦笑いしながら。
「お前ら・・・わざとやってるんじゃないだろうな?」
唯先輩はむー・・・と唸って。
「梓が、えっちしたくないって。」
「「「え?えっちぃ?」」」
3人の先輩方が見事にユニゾンで声を挙げて、私を見る。
律先輩とムギ先輩はニヤニヤしてて。
澪先輩は本気で心配してる眼だ。
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