唯と梓の部屋

□いつも一つに。
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「大嫌い。」
「・・・へっ?梓っ?」
「・・・唯さんなんか。だいっきらいっ。」
可愛い浴衣に身を包んだ私の恋人は。
逢うなり、自分の肩を抱いて、爆弾発言。
「あ・・・梓。」
私を粉々に打ち砕く。

・・・・・・

それはある夏の日のこと。
あまりの暑さに部室のクーラーが悲鳴をあげて。
放課後ティータイムのみんなでプールに逃げ込む事にした。
私は、梓にお誘いの電話。
「もしもし!あ、梓、私ー!ねぇねぇ、この後、空いてる?」
「みんなでプールに行こうって言ってるんだけど。梓も行こうよ!」
私は当然OKがもらえるものと思って勢い込んで聞いた。
でも電話の向こうで、梓はすまなそうに謝った。
「・・・すみません、この後、予備校があって・・・」
多分、目を泳がせながら応えてる。
「あの、絶対、N女子大、受かって。唯さんと一緒の大学行きたいから。」
そう。ここのところ、お互いに忙しくてかなりの間、梓と逢えてない。
「・・・うん。そうだね。」
「・・・ごめんなさい。」
「うん。じゃーねー・・・」
私はがっくりと肩を落として。
「・・・無念・・・夏期講習だそうです。N女子大目指すから、頑張るって・・・」
「梓、大変そうだな。でもそれじゃ仕方ないじゃないか。」
澪ちゃんが慰めてくれる。
「さわ子さんなんて、平日午前中なんて絶対無理だから。4人で行きましょう?」
ムギちゃんも残念そうにふふって笑って。
「うん。そうだね。仕方ないよね。」
私は無理矢理自分を納得させた。

プールにて。
「もー。律っちゃんと澪ちゃん、すぐいなくなっちゃうんだから。」
ひとしきり遊んだ後、ちょっと一休み・・・と言っているうちに、あの熱々カップルはいなくなってしまった。
「さっき呼びに行った時は、澪ちゃん、すぐに戻るって言ってたのになー。休憩時間に呼びに行ったら、もういなかったんだよ?」
私はぶんむくれて、レジャーシートに腰を下ろして。
「焼きそば、冷めちゃうのに。」
ちらり、と4つ積まれた焼きそばに目を落とす。
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