唯と梓の部屋

□お気に召すまま
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「唯さん・・・私、N女子大、落ちちゃいました。」
唯さんはびっくりした表情で。
「え?梓、あんなにがんばってたのに?」
「うん・・・合格発表見に行ったら・・・受験番号なくって・・・」
「えー?梓、ほんとに落ちちゃったの?あんなに勉強忙しいって、私のコト、ほっといたのに?」
「これでようやく一緒の大学になれるって思ってたのに・・・ごめんなさい。」
悲しくて悲しくて。
私は俯いて涙をぽろぽろ、ってこぼした。
「そう・・・がんばってたのに、残念だったね、梓。」
唯さんの手が優しく、私の髪を撫でてくれる。
「ふっ、う、う、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・〜〜〜。」
唯さんと一緒にいられない。
悲しくて涙が止められなくて私は目を伏せた。
「そんなに謝らなくてもいいよ、梓。」
「私、待ちきれなくて、他の娘と付き合うことにしたから。」

「え?・・・え?」
私が慌てて目を上げると。
姫子さんが唯さんの腕を取って。
むにぃ、って柔らかそうな胸を押し付ける。
「ごめんね、梓ちゃん。」
小悪魔な微笑みを浮かべてウインク。
あれ?あれ?姫子さん、アメリカに行ったって、聞いたけど?

「おい。唯。早くしろよ。」
あ、大学の部室であったロックっぽい女の人。たしか晶さんって言ったっけ。
「あ、晶ちゃん。待って待って。」
きりり、と晶さんは男前の笑み。
「ふふ、今夜は寝かさないぜ?」
きゅ、って唯さんの腰を抱く。
「やん、もう。えっち。」
唯さんがくすぐったそうに笑う。

「あ、あの。ゆ、い、さん?」
唯さんは、私を振り返って。
「あ、そっか。じゃあ梓。こういうことだから。」
『まだいたの?』みたいな表情を浮かべて。
「・・・さよなら。」
姫子さんと晶さんに促されて、くるり、と私に背中を向ける。

「えっ、えっ。待って、唯さん。私、私っ、来年またがんばるからっ。」

唯さんを追いかけようとしたけど、走っても走っても追いつけない。
「やだ、やだ、唯さんっ、行かないで。ずーっと一緒に・・・」
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