さわ子と紬の部屋

□わがままなプロポーズ
2ページ/15ページ

ムギをお風呂に押し込んで。
着替えを準備して、持って行く。・・・ブラのカップが合わないかもしれないけど、この際しょうがない。
ムギの脱いだずぶ濡れのドレスを摘み上げて途方にくれる。
「・・・ドレスってどうやって洗ったらいいのかしら。」
私が作る舞台衣装のドレスもどきならともかく。どんな材質が使われているのかすら想像が付かない。
念のため、ひっくり返してみたけど、材質や洗い方を表示してるタグ・・・あれ、ケアラベルっていうんだけど・・・は付いてなかった。
そりゃそうだ。きっとこのドレスはムギのために一品一様で仕立てられた物。
ケアラベルなんかついてるわけがない。そもそも洗う事を前提として作られているかどうかすら怪しい。
「普通のクリーニング屋さんで扱ってくれる、かな・・・」
とりあえず、ハンガーにかけて干しておくことにした。

しばらくするとムギが髪を拭きながら、バスルームから出てきた。
私の部屋着のスェット姿はなかなか斬新だ。
私は作っておいた温かいミルクティーを渡しながら。
「大丈夫?ちゃんと暖まった?」
ムギはこく、と一口ミルクティーを飲んで、ようやく微笑んだ。
「・・・おいしい。」
「それは良かったわ。でも市販のティーパックだから、きっと錯覚よ?」
彼女が普段飲んでいる紅茶とは比べるのが失礼なほどだろう。
「ううん。」
ムギはかぶりを振った。
「さわ子さんが私のために作ってくれたからおいしいの。」
・・・抱きしめてもよかですかいっ。
心の中でつぶやいて、敢えて平静を装った。
「・・・ばか。照れるからやめなさい。何があったか、聞いてもいい?」
「・・・はい。」
ムギは顔を伏せて気まずそうに上目使いでこちらを見ながら。
「あのぅ・・・怒らないで聞いてくださいね?」
・・・ああっ、抱きしめたい、踊りかかりたいっ。許すっ!なんでも許しちゃうっ!
でも私はにっこりと大人の微笑みを浮かべた。
「内容によるわ。とりあえず話してみてご覧なさい?」

「実は・・・この間、私、お見合いのお話をいただいたんです。」
「え?だってムギ、まだ大学に入ったばっかりじゃない?」
「でも、結婚できる年齢です。色々な企業の社長の息子さんからお話をいただいてるみたいなんです。」
そっか。そりゃあそうよね。ムギのお父さんのグループ相当大きいらしいし。
しかも娘は頭脳明晰、容姿端麗、性格抜群。これで見合いの話が来ない方がどうかしてるわ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ