さわ子と紬の部屋

□私だけの呼び方
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「あ、先生ー!こっち!こっちですー!」
通りの向こうにさわ子先生の姿を見つけて私はうれしくなって声をかけた。
さわ子先生ははっと気づくと、何故かすすす・・・と物陰に隠れた。
・・・どうしたのかしら。
「先生?こっちですよぅ、先生ー!」
さわ子先生は脱兎のごとくわき道へ走り去った。
???
携帯電話が振動して、着信を知らせる。
さわ子先生?
「はい、もしもし?」
「ゼェゼェ・・・ムギちゃん?大きな声で『先生』って呼ぶのはやめて。」
「どうしてですか?」
「・・・バレちゃうでしょ、一発で。」
「まるでやましい事してるみたいですね。参考書選ぶの手伝ってもらうだけじゃないですか。」
「んぐっ・・・そ、それはそうなんだけど・・・」
「私は別にかまいませんけど。・・・やましいコト、しちゃいますか?」
「え?・・・いやいやいや!しない!しないわよ!・・・もう。横の通りのカフェに入っているから、来てちょうだい。お茶くらい奢るわよ?」
「はーい。」
・・・あれ?・・・てことは先生と2人でお茶するってこと?
私はハニースィートを口ずさみながら、先生が走って行った通りに向かった。

「えへへへ。」
「どうしたの、ムギちゃん。やけに嬉しそうね。」
カフェで先生と二人のテーブル。
「だって。これってどう見ても恋人同士のシチュエーションじゃないですか?」
かわいい雰囲気のカフェ。
まわりを見ても恋人同士か、待ち合わせをしていそうな人が多い。
「そ、そんなことないわよ。」
「ねぇ、先生。私、パフェ頼んでいいですか?」
「いいけど。やっぱり若いのねぇ。よく朝からパフェ行けるわね。」
「甘いものは別腹なんですー。」
私はいちごパフェ。先生はミルクティー。

「先生?あーん、ってしてもらえません?」
「はいぃぃ?」
「ねぇ、いいでしょ、ねぇ、先生、先生ー。」
「こら。あんまり先生先生言わないの。」
「あーんってしてくれたら、考えてあげます。」
「はいはい。もう。」
あ、照れてる。
目をそらして赤くなってる先生、ちょっと可愛い。
「こんなこと、滅多にしないんだからね。」
・・・こ、これってもしかして・・・伝説のツンデレってヤツかしら?
「・・・あーん。」
「はぷっ。・・・いちごパフェ、おいしー。」
い・ち・ご・パ・フェが・と・ま・ら・ない。
思わず口ずさんじゃう。
「先生も一口いかが?」
「え?いいの?」
「はい!あーん!」
先生は明らかにしまった!という顔をした。
私は敢えて気づかないフリ。
「・・・あーん?」
「・・・やられたわ・・・はぷっ。」
まわりのカップルのうらやましそうな視線が心地よい。
先生はそれが落ち着かないみたいで。小声で囁く。
「早く食べて。さっさと行くわよ。」
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