さわ子と紬の部屋

□38ぶんのいち
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「あの!さわ子先生?」
先生はいつもの優しい笑顔に戻った。
「なに?」
どきん。どきどきどきどき。
私の胸が64ビートを刻む。
「あのっ・・・今の曲の曲名、何ていうかご存知ですか?」

「もちろん!私だって音楽教師なんですからね!」
先生は腕組みをしてえっへん!と胸を張った。
「ザ・ヴィーナスの『キッスは目にして!』でしょ!」
私はいやんいやん、とかぶりを振る。
「違いますっ!違わないけど違いますっ!」
「えええっ!」
先生・・・そんなに驚くところじゃないと思います。

「じゃ、じゃあアレンジがちょっと違うと思ったけど、まさか『メタルハート』?アクセプトの?」
「アレンジという問題以前に、全く違ってたと思いますけどっ。メタルハートでは途中でちょっと使われてるだけですっ!・・・もう少し古い方向でお願いします!」
「まさかムギちゃんがアクセプト知ってるとは思わなかったわ・・・やるわね、あなた!」
びし!と親指立ててぐっじょぶ!みたいな。

「古いっていうと・・・嘉門達夫の『アソコに毛が生えた』はいつだったっけ?」
私が涙を浮かべて睨みつけると彼女はようやくはた、と手を打った。
「あ、あー。『情熱の花』ね?ザ・ピーナッツの!」
「・・・せ・ん・せ・い。」
「や、やーねぇ。分かったわよ。ベートーベンの『エリーゼのために』でしょ?」
いぢわる。
「・・・分かってたんなら最初から言って下さい。」
すぅ・・・と深呼吸。
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