さわ子と紬の部屋

□ずっとあなたと。
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「えー?また、お見合い?」
「いいわよぅ。・・・ええ、大丈夫。ちゃんと考えてるから。」
私は電話の向こうの母につぶやいた。
「好きな人?・・・うん。いることはいるけど。」
最近、とかくお見合いをさせたがる。
まぁ、適齢期を過ぎようとしている娘を持つ親として分からないわけじゃない。
「・・・男運が悪いって・・・実の娘に言う言葉?」
あいにく、私の好きな人は男運関係ない人なの。
・・・って言ったら驚くかなぁ。

その日、私はムギと待ち合わせ。
普段は土日しか会えない私達が珍しく金曜日の夜に会うことにして。
私は仕事を早く切り上げてウキウキしながら駅前の待ち合わせ場所に向かった。
「ムギーーーーっ!」
遠くに恋しい人の姿を見つけた私は大きな声でその名を呼んで駆け寄る。
なのに、ムギは一瞬こちらを見て手を振ったものの、どこか上の空。
ムギの視線を追うと、夕暮れ時のカップル達がいちゃついていた。
私達が待ち合わせたのはカップルがデートの待ち合わせで使う有名な場所。
そこでカップルがいちゃついていても、暖かく見守るのがルールというものだ。

「そんなにじっと見てたら怒られるわよ?」
しかし幸いにもカップルはムギの熱いまなざしにも気付かず、立ち上がった。
男の子が何か女の子の耳元で囁くと。
女の子はくすぐったそうにして。
「もう、やだ、まーくんったら。えっち。」
しなだれかかるようにして男の子の腕にすがりついた。

「ねぇねぇ、さわ子さん!」
ムギはようやくカップルから目を離して、今度は私に熱いまなざしを向けた。
「あれ!あれ、やりたいです!」
そしてカップルの後ろ姿を指差す。
私はできるだけ優しく微笑みながら。
「ダメよ。誰かに見られちゃったら困るもの。」

あとね、指差しちゃだめよ?

でもムギはぷぅ、と膨れて。
「見てもらいたいんだもん!さわ子さんは私といちゃいちゃするの、イヤなんですか?」

そんなわけ、ないでしょ。肉食系女子としてはもうかぶりつきたいくらいよ。
私はあたりを見渡して。
あきらめてそっとムギに右腕を差し出す。
ムギは嬉しそうに私の腕に飛びつく。
「あとねっ、あとねっ!」
「・・・えっちなコト、耳元で囁いて下さい。」
私は思わずムギの方を見ると。
ムギは真っ赤になって照れ笑い。
「全くもう。私の理性にも限界あるわよ?」
ムギの耳元でこれ以上ないえっちな言葉をつぶやく。

「・・・・・・」

ムギはぴくん、ってなって。私の腕をぎゅうって抱きしめる。
「もう!さわ子さんのえっち!えっちすぎです!」
真っ赤になって抗議するムギが可愛くって。
私はニヤニヤしながら。
「何よ、もう〜。ムギがしてって言ったんでしょ!?」
ムギが腕にしがみついてくるのが嬉しくて。
私達はじゃれ合いながら歩きだした。
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