さわ子と紬の部屋

□罠にかけられて
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採寸に来た業者は、案の定、メッセージを持ってきて。
採寸を受けながらそのメッセージなるものに目を通す。
「先生へ
この度はご招待お受けいただき、ありがとうございます。
娘とのこと、いつもお世話になっております。
ただし、この度のパーティでは招待のお客様も多く、世間体に配慮いただき、例の件、ご内密にお願いします。ではよろしく。
紬父」
メッセージっていうより命令書よね、これ。
「でも・・・世間体、かぁ。」
せっかくのムギの誕生パーティなのに。
「なんか。気が重いなぁ。」

そして当日。
「これ・・・マジ?」
招待されてやってきたのは、超高級ホテルの最上階のホール。
「娘の誕生パーティってもっとささやかなモノだと思ってたんだけど。」
私は最上階までエレベーターで上がってみた。
受付で名前を告げると。
「山中様ですね。お待ちしておりました。」
メイドさんが付いてくれる。
「受付まであるって・・・何人来るのよ。」
私はフィッティングルームに通されて。
私のために仕立てられたドレスに着替えた。
採寸だけして、後はお任せだったのだけど。
「うわぁ・・・すっごい。」
真っ赤なシルクのドレスにアクセントのパール。
「これ、いったいいくらするのかしら・・・」
メイドさんに促されて歩きだそうとすると。
「うわ。動きづらっ!」
ロングドレスの裾が絡んでとにかく動きづらい。
メイドさんにつかまりながら、ようやく会場に着く。
「あ!さわ子さぁん!」
ムギは薄い緑に白いレースをふんだんに使ったドレス。
白い花の髪飾りも可愛い。
ロングドレスを意にも介さず駆け寄ってきたムギは。
「素敵!とっても似合ってますよ?」
遊んでほしい子犬みたいにはしゃいでいる。
「ムギぃ・・・これ、どうやって動くの?」
私はよろけながらムギにしがみつく。
「簡単です。こことここをつまんで。ちょっと空気を入れるようにすると動きやすいですよ?」
あ、ほんとだ。私はようやくちょっと動けるようになって。
「ありがと、ムギ。そんで、ハッピーバースディ。」
ちゅ、ってほっぺにキス。
ムギははにかんでちょっとくすぐったそうにする。
「ムギもとっても可愛いわ、よ・・・」
ムギが可愛すぎて止められなくなって。
「???さわ子さん?」
ムギの顎を捉えてつい、と上を向かせて。
「んっ・・・」
唇を捉えて舌を挿し入れる。
「んむ・・・ん、ちゅ・・・」
きゅって抱きしめてやるとムギも手を私の背中に伸ばす。
しばらく私達はつながっていて。
「ふはっ・・・ん、もう、さわ子さんったら。」
ムギはとろん、とした目でつぶやく。
「父様に見つかったら怒られちゃいますよ?」
私は覚悟を決めて。
「うん・・・パーティ中はいちゃいちゃできないみたいだから、さ。」
ムギの瞳を覗き込んで。
「今ので、しばらくガマンする。ムギちゃん分、補給、よ。」
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