さわ子と紬の部屋

□罠にかけられて
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ほどなくパーティは始まって。
全部で100人くらい、いや、もっと?
いずれも各界の名士って風情だ。
しかも半分くらいは若い男性。
ムギが目当てなのがありありと分かる。
主役のムギは当然中央に駆り出されて、みんなから祝福を受ける。
その姿はとても艶やかで。
「やっぱり・・・正真正銘のお嬢様なんだなぁ・・・」
私は会場の隅っこで配られたカクテルを飲みながら当たり前の事をつぶやく。
ムギが参加者に向けるにこやかな微笑みに嫉妬して。
「・・・ふんだ。私なんてムギのもっといい表情知ってるんだから。」
「お茶が入りましたよー。」っていう時のとろけそうな表情。
つまみ食いを見つかった時のぺろ、って舌を出したはにかんだ顔。
えっちで追い込まれた時の困ったように眉を寄せておねだりする表情。
真っ白になった後の気だるげな仕草と幸せそうな顔。
私はそれらを思い浮かべて気晴らしをした。
ふと、またムギを目で追うと。
ムギと同じ年くらいの男性に囲まれて無理にお酒を飲まされてるみたい。
困った表情で愛想笑いを浮かべながら、断っている。
その表情が可愛いもんだから、男達は余計にお酒を薦める。
「じゃあ出会いを祝して!カンパーイ!」とか。

ムギはお酒に弱いんだから!
そんで酔っ払うと、すごくえっちになっちゃうんだからね!
カクテルを二杯も飲ませれば、腰が砕けちゃって、なすがままなんだから!

私はつかつかつかっとそこに歩み寄ると。
グラスを奪い取って一気飲み。
「こら。未成年にお酒飲ませちゃダメよ?」
普段はこっそり飲ませちゃってるけど。
私は自分の事は棚に上げて。にっこり笑った鬼の形相で言った。
すると男達は意外にあっさりそそそ、と退散したので。
私はムギの方に向き直って今度は優しく微笑む。
「大丈夫だった?ムギ?」
するとムギは感激の面持ちで。
「うんっ。さわ子さん、かっこいい・・・」
私の胸の中に飛び込んでくる。
「・・・守ってくれてありがと。」
か、可愛いぃぃぃ。
私は思わずきつく抱きしめそうになる腕を理性でもって抑えつけた。
ぽんぽん、と優しく栗色の髪を撫でてやって。
「お酒、飲まされちゃった?」
ムギは少し紅くなって。
「うん。少し・・・。」
蕩けそうな瞳で見つめると。
私をちょいちょい、とかがませて、そっと耳打ち。
「あのね?・・・ちょっとだけ、カラダ、疼いてるの。」
ふぅ、と耳たぶに熱いため息。
「あとで、鎮めて、ね?」
言うなり、ととんって離れて。
えへへ、って照れたような笑み。
私は耳を抑えて。
「うっ、うん・・・」
ムギに見とれてて、マヌケな答えを返すのが精一杯だった。
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