さわ子と紬の部屋

□はじめての教育実習 Love & Roll!!
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・・・・・・
2週間後。
「初めまして。琴吹 紬と申します。色々と行き届かないところがあるかと思いますが、ご指導よろしくお願いいたします。」
ほんとにムギは教育実習生として桜高にやってきた。
上下薄いグレーのスーツにちょっとフリルの付いた白のカッターシャツ。
白のストッキングが嫌味にならないとこが若々しい。
ぴしっとした中にもちょっとムギらしい可愛さのある服装だ。
「琴吹先生は英語の先生として教育実習に入っていただきます。琴吹先生は当校の卒業生で、大学2年生ながら、成績優秀で特別に実習生としてお迎えすることになりました。」
校長の紹介を聞きながら。
・・・聞けば聞くほど、完璧なお嬢様ぶりよ、ねー。
よっぽど大学の講義がんばったんだろう。
そんなにまでして私と一緒にいたいと思ってくれた事が本当に嬉しい。
一方、ムギが頼んだ事ではないにしても、ムギの実家の力がなければ、到底こんな事は実現できないだろう。
たゆまぬ努力に恵まれた環境。
「・・・か・ん・ぺ・き、よねー。」
でもそれらは普段のドジで天然なムギとは遠い気がして。
私はなんとなく納得できない感じがしていた。
「さわ・・・山中先生っ。」
ぼんやりしていた私はいきなり背中から声をかけられて。
「よ、よろしくお願いしますっ!」
・・・ほら。
この構ってもらいたくて、しっぽをぶんぶん振っている子犬のような笑顔とは全く違う。
「こちらこそ。よろしくね、琴吹先生。」
私は逆に完璧な教師の顔で。
にっこりと挨拶を返す。
「は、はいっ。」
嬉しそうな笑顔でムギが返したところで。
「琴吹先生!」
英語科の主任の先生が遠くからムギに声をかける。
キツめのメガネをかけた厳しい事で有名な・・・私が苦手とする先生だ。
「ムギ、ムギ。」
私は他の先生に聞こえないように小声で。
「あの先生、逆らうとうるさいから気をつけて。厳しいからあんまり気にしないように、ね。」
つぶやいて、いたずらっぽくウィンク。
ムギは嬉しそうに、やっぱり小声で。
「ありがとう、さわ子さんっ。がんばって、行ってきます、ね。」
可愛らしいウィンクを返してくる。
ととと、と主任先生に駆け寄っていくムギを眺めながら。
・・・あの愛らしさと完璧さが合わないのよ、ねー。
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