さわ子と紬の部屋

□はじめての教育実習 Love & Roll!!
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「いいですか、琴吹先生。あなた、まだ若いんだから、最初が肝心よ。生徒にナメられないように。ビシっと。いいですね。」
「は、はいっ。ビシっと、行きますっ。」
ムギはにっこり笑って言った。
主任先生はメガネをキラリ、と光らせて。
「・・・まぁ、いいでしょう。授業はね、教科書の36ページを開いて。ここのところが・・・」
ムギのほややんとした笑顔にため息をつきながら、注意事項を伝えつつ、向こうへ行ってしまった。
「・・・幸運を祈る。」
私はそちらに十字を切って、自分の授業に向かった。

次にムギを見たのは、授業が終わって、教員室に戻って来た時。
窓の外から、指導室に入っていくムギと主任先生が見える。
「ああ、やってるやってる。」
ムギは何かガミガミと注意を受けながら、懸命にメモを取っている。
「がんばってる、なー。あんなの、適当に聞き流しとけばいいのに。」
指導室の扉が閉じられて。
なんとなく私は置いていかれた気分になった。
「ちぇ。ムギ、やっぱり音楽にすれば良かったのに。」
ぶつぶつと、独り言をつぶやく。
「・・・そしたら、色々・・・指導してあげたのに、なー。」
今、ムギはどんな指導を受けているんだろう。
私は閉じられた指導室の扉を見て、またため息をついた。
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