さわ子と紬の部屋

□幸せになろうよ。
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私達は他愛もないおしゃべりをしながら食事をして。
「おいしかったぁ。ありがと、さわ子さん。」
いつも笑ってるムギの笑顔を見ていたら、とても幸せな気持ちになった。
「ううん。どういたしまして。こっちこそ、ありがとう、ムギ。20歳だ、ね。お誕生日おめでとう。」
私はにっこり笑って。居住まいを正した。

「ねぇ?ムギ?」
「はい。何ですか?さわ子さん。」

私は近年稀に見る真面目な顔で。
「結婚しようよ。」

「・・・はい?」
目をまんまるにしたムギに、私は続けた。

「ムギ。私、あなたのこと、一生笑わせる自信、ある。」
ムギは相変わらずきょとんとして。
「そんで。あなたが笑顔でいてくれたら。」
私はムギの向日葵みたいな笑顔を思い浮かべながら。
「私、一生幸せでいられる自信、あるよ。」

「だから、結婚しよう、ムギ。」

私はじっとムギの目を見ながら。
そっと隠し持っていた20歳の誕生日プレゼント。
給料3ヶ月分の指輪をこと、と机の上においた。

「もう『一緒に地獄に落ちてくれ』なんて言わない。一緒に幸せになってくれ、ムギ。」
(さわ子と紬の部屋「わがままなプロポーズ」参照の事。)

ムギは涙でくしゃくしゃになりながら。
くすくす、って笑ってくれた。
私の大好きな。いつもの笑顔。
「はい。・・・はい。喜んで。大好き、さわ子さん。」
私がムギの涙をそっと拭ってやると。
「今日はよそ行きモードだったのに。ここだけ、ロックンロール。」
ムギはくすくす笑いながら言った。

私は静かに席をムギの隣に寄せて、二つ並べてリングを置いた。
「・・・これからはずっと一緒よ。おばあちゃんになるまで。」
そしたらムギはぎゅ、って抱きついてきて。
「嬉しい・・・でもどうしよう。これ以上、幸せになれる自信ない。それくらい、すごく幸せです。」
くにゅ、ってムギの柔らかいカラダが押し付けられて。
「あら。簡単よ。」
私は背中に回していた手を下に伸ばして。
「こうすればいいの。」
ふにゅ、って柔らかいお尻を揉みしだく。
「や、はぁんっ・・・・」
ムギはかわいくのけぞって、ぽかぽかと私を叩く。
「もう!ばか!せっかくロマンチックだったのに。ヘンな声出ちゃったでしょ!さわ子さんのケダモノっ。」
私はにっこり笑って。
「あら?じゃあ、やめる?」
しゃらん、って予約してある部屋の鍵を見せる。
「・・・したくない、なんて言ってないもん。」
ぷぅ、と膨れたムギは恨めしげにこちらを見上げて。
「・・・しあわせに、してくださいっ。」
目をつぶって、そっと唇を差し出す。
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