律と澪の部屋

□ダイエット!
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カップに一杯の牛乳をあっためて、卵黄と蜂蜜をかき混ぜて、最後にバニラエッセンス。
あったかいミルクセーキ。
ようやくベッドに身体を起こした澪に手渡す。
「ほら。貧血には鉄分採らなきゃだぞ。卵とか乳製品は結構いいんだよ。」
「・・・ありがと。」
こく、と一口飲んで、ぱぁっと明るい笑顔。
「おいしーい。律、ほんとにこういうの上手だな。」
「そんなの、誰でも簡単にできるぞ。それより、ちょっとは元気出たか?」
「うん。もう大丈夫だと思う。」

なんとなく原因の見当はついていた。
「なぁ、澪。最近、ごはんちゃんと食べてないだろ。またダイエットか?」
澪は真っ赤になって言った。
「う、うん。お正月油断してたら、体重増えちゃったんだよ。」
「どのくらい?」
ここは私達の部屋でどう考えても他に人はいないのに、澪はあたりを見渡して小さな声で言った。
「・・・んとね。・・・1キロくらい?」
「たった1キロぉ?」
澪は小さく体をもじもじさせてつぶやく。
「ほ・・・ほんとは1.2キロくらい・・・」
私はわざと大げさに手を広げて言った。
「べっつにそのくらい増えたっていいじゃんか。」
「ゼロカロリー飲料とかも、飲んでるだろ。そればっかり飲んでると冷え性の原因になることもあるってテレビで見たぞ。」
「だ、だって油断は大敵なんだぞ。冬は簡単にお肉ついちゃうから1キロ減らすのも大変なんだぞ。」

私はマジメな顔をして、澪の目を覗き込んで言った。
「澪。私は抱きしめるとふわふわな柔らかい澪が大好き。」
「だからやせなくていい。」
「そんな事言ったって・・・スタイルには気を使わなくっちゃ。」
「恋人の私が許す。気を使わなくっていい。私の作ったごはんをおいしーい!って食べてくれるほうがいい。」
「だ、だけど。できるだけいつもキレイでいたいんだもん!」
澪は目を伏せて真っ赤になった。
「・・・だって。律の自慢の彼女になりたいんだよう。」

ほんとに澪は可愛くて。そういうところは大好きなんだけど。
私は澪の長い髪を梳きながら言った。
「あのなぁ、澪。できることなら、今すぐ世界中に自分の彼女を自慢したいんだよ、私。」
「例えばこの黒髪とか。ふわふわの胸とか。どきっとする白いうなじとか。大きくて透き通った瞳とか。うっとりするくらいきれいな歌声とか。えっちの時の可愛いあえぎ声とか。」
愛をこめて澪の頭を撫でてやる。
「自慢したいものは山ほどあるよ。でも私は澪の外見とか声だけを自慢したいんじゃない。」
「例え澪が太っちゃっても、綺麗な声で歌えなくなっても、おばあちゃんになっても私は胸を張って言うよ。」
「澪は私の自慢の彼女だって。」
「律・・・」

「愛してる、澪。澪が澪でいる限り、澪の全部をずっとずっと愛してるよ。」

「だから無理なダイエットとかやめろよ。そんなんで澪が身体を壊すことの方がよっぽど嫌だよ。」
「うん・・・ごめんなさい。」
澪はまたミルクセーキをこく、と飲んで。
「そんで、ありがと。・・・なんか律、すごい優しい。また惚れ直した。」
「へへっ、そうだろ。」
私は顔を寄せて、澪にキスをせがむ。
澪は素直にミルクセーキ味の唇を差し出した。
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