律と澪の部屋

□私を月まで連れてって!
2ページ/14ページ


「ばっか野郎っ!」

私は拳をぎゅぅ、と握り締めて。
「私と澪の仲はっ!そんなもんだったのかよ!」
でも、零れ落ちる涙は止められなくて。
「『今晩、月に帰らなきゃいけないんだ。』?」
ぼたぼたぼたっと大粒の涙も零れるままに。
「嫌だ!そんなの、絶対認められるかぁ!」
澪は困った顔をして。
「お願い、律。私だってつらいの。でも仕方ないのよ。」
「嫌だ。嫌だよ。澪。どうしてそんなコト言うんだよ。」
私は泣きながら澪の腰にすがった。
「わっ、私が嫌いになったから、そんなコト言うのか?」
「悪いトコあったら直すから。もうみんなが見てる前でえっちなコトしない。痛いって言ったら必ず止めるから。ねぇ、お願い、みぃおぅ・・・」
「私、もう澪なしじゃいられないの。もう澪がいない人生なんて考えられないよぅ・・・」
澪がやさしく頭をなでてくれる。
「ねぇ、律?私だって同じ気持ちだよ?」
 
「でも・・・」
言いかけて澪ははっ!と身を固くする。
「・・・来た!」
澪は私を固く抱きしめて。
「来たって・・・何が?」
私も思わず澪を固く抱きしめる。
「月からの使者が・・・来たの。」
澪の瞳が私の腕の中で怯えてる。
「ど、どこだ?」
私はあたりを見渡した。
丸い月の中に、黄色い光点が現れたかと思うと。
それは見る間に大きくなって。
大きな円盤となった。
中から月の青い光に包まれた人が出てくるのが見える。
そんなバカな。
心の中でつぶやいて澪を背中にかばう。
背中に澪の震えが伝わってきて。
「大丈夫だ、澪。きっと守ってやるから。」
根拠のない約束をする。
「う、うん。・・・きゃあっ。」
後ろを振り返ると、澪の身体がふわりと浮いている。
「くそっ!・・・つかまれ、澪っ!」
必死に手を伸ばす澪の指が。
瞬間、私の手に触れて、ふっと離れる。
「やっ!やだやだ!律、助けてぇ!」
澪の大粒の涙がぽたぽたと雨のように降ってくる。
「澪っ!手ぇ伸ばせっ!」
くっそ。なんで私の背はこんなに低いんだっ!
精一杯伸ばした澪の手も。
渾身の力を込めて跳んだ私の手も。
ただ空しく空を切る。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ