律と澪の部屋

□大好き!
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「痴漢、か?」

彼女はひくん、ってなって。
小さくこくり、とうなづいた。
「・・・安心したら、腰抜けちゃった。」

「ばか。何で今まで言わないんだよ。」

できるだけ優しく言ったつもりだった。
「だって。悔しかったんだもん。」
だけど澪は唇を噛んで。
「律以外の人に触られて。気持ち悪かった。」
ぼそぼそとつぶやいた。
「ほんとにっ。怖かったんだからっ。」
私はもう一度泣き出した澪を優しく抱き締めた。
「ごめん。もう大丈夫、もう大丈夫だからなっ。」
「うん・・・ありがと、律。抱いててくれるとすごい安心する。」
澪は私の胸にすりすり、と頬をすり寄せた。
「今日はどっかに泊まろ。・・・そんで、澪。」
「なぁに、律。」
「・・・そろそろ歩けるか?さっきから駅員さん、すごいこっち見てるんだけど。」
澪は小さくひゃあああ、と悲鳴を上げて。
真っ赤になって私にすがり付いた。
「やだ。抱き合ってるの、見られちゃったかなぁ・・・」
ぺろって舌を出していたずらっぽく、ふふって笑う。
私はそんな澪の腰をきゅって支えてやって。
「かまわないよ、見られちゃっても。」
真っ赤になったほっぺにちゅ、ってキスをした。
澪はびっくりしたような顔をして。
「・・・ばかりつ。恥ずかしいだろっ。」
私の腕にもう一度しがみついて。
顔を伏せて歩き出した。
駅員さんは見て見ぬフリをしてくれた。

「・・・よっ、と。」
澪がいたずらっぽく笑って。
「せーのっ。」
私達は大きなベッドに二人して飛び込んだ。
寮に帰るのは諦めて。
たまに使ってるラブホテル。
「えへへ。連れ込まれちゃった。」
照れくさそうに澪が笑う。
「それもこんなえっちなお部屋。」
・・・確かに。
見渡すと壁にX字の木の十字架みたいのがあって。
手枷、足枷がついてる。
澪は私の視線を追って。
「律、こんな趣味あったんだ?」
上目遣いで私をにらむ。
「ちっ、ちげーし。休日前の夜だから、混んでて、ここしか空いてなかったんだよ。」
「・・・ほんとかー?」
くふふ、と澪は含み笑い。

「澪。」

私は真剣な顔で。
「今日、無理しなくってもいいんだぞ。」
ぎゅう、って強く澪を抱き締める。
「辛かったろ。一晩中、抱いててやるから、安心して寝なよ。」
澪は一瞬きょとんとした顔をして。
「ありがと。なんだか律、すごく優しい。」
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