律と澪の部屋

□ぴっとわーく。 Side澪
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律はくぁ・・・って、大欠伸して。
「澪、ごめん。私、昨日、完徹だからさ。今日、もう寝ちゃっていい?」
私はテレビに集中していたフリをして。
「あ、ああ。ごめん。気付かなくって。」
こうなるとこっちからは言い出せない。
『ねぇ、律。かまって?』なんて。

『あーっと!XXXX、ここでコースアウトーっ!』

私はアナウンサーの声に併せてテレビの画面を見つめて。
「あ、ああ、良かった。コース復帰できたみたいだな。」
テレビに集中していたかのようにつぶやく。

そしたら律は不意打ちで私のほっぺにちゅ、ってしてきて。
「F1見るのも好きだったんだ、澪。」
私はキスされたほっぺがかぁっと熱くなるのを感じながら。
「うん。つい最近だけどな。」

ばか。ばかりつ。
不意打ちすぎるだろ。
思わず顔がにやけるのを必死でこらえる。

「赤いチーム、好きなの?」
「うん。応援してるんだ。このチーム、伝統があって強いんだけど、たまにポカするし。」
「そういうとこが毎回ハラハラするし、人間味があって好きなんだ。」
「へーぇ。うん。このチームの車だけ、赤で統一されててなんかかっこいい。」

私って単純。
ほっぺにキスしてもらっただけで、さっきまでモヤモヤしてた気持ちがさぁっと晴れて。

「だろ!律もそう思うよな!」
律が同意してくれただけでこんなに嬉しい。

「・・・それに。私、スポーツ見るの好きだろ?特にチームスポーツで皆がチームのために協力するとこが好きなんだけど。」
「これも同じなんだよ。チーム全員で勝つために戦うんだ。」
「へぇ。カーレースってドライバー一人で戦っているイメージがあるけど。」
律は眠そうにしてたけど。私はついつい饒舌になって。

「違うよ。ほら、今、この赤い車がこっちに入ってきたの、分かる?」
「これをピットインって言って、チーム全員でタイヤを変えたり、給油したり、壊れた部品を取り替えたりして、できるだけ早くドライバーを行かせてやるんだ。」
テレビの中では同じヘルメット、同じレーシングスーツを着込んだクルーがわらわらとレーシングカーを取り囲んで慌しく作業をしている。
「うわぁ、すごい。何人いるの、これ。」
「何人かは私も分からないけど。」
私は苦笑しながら。
「それぞれ役割はしっかり決まっているんだぞ。そして。」
「各自が与えられた仕事にしっかり集中するから。いい仕事ができるんだ。」
律は大あくびをして。
「ふぅん。ごめん、澪。今日はやっぱ眠いや。またの機会に、な?」
「・・・あ、ああ。ごめんな、引き止めちゃって。」
『やだよ、律。もっとかまって。』
私はにっこりと笑って心の中でつぶやいた。

「んにゃ。ほんとに面白そう。次は一緒に見ようなっ。」
律はそう言うと、ひらひらと手を振って。
自分の部屋に帰っちゃうのかと思ったら、私のベッドへ。
「あれ?今日、私のベッドで寝るの?」
思わず声が弾む。
「・・・昨日完徹でベッドの上もぐちゃぐちゃなんだよー。」
「もー片付けたくなーい・・・」
ふらふらとベッドに行く律の背中を見ながら。
「なんだよ。ほんとに、ほんとにしょうがないヤツだな・・・」
悪態をつきながらもニヤニヤ笑いを隠せない私。
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