律と澪の部屋

□ちっさいのも好き!
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私は久々に自分の部屋に戻って。
とはいえ、身の回りの物は全部寮に持って行ってしまったので、あるのはベッドくらい。
母の日のメッセージカードを書こうと思って、ペンを忘れた事に気づいた。
「あちゃー。こういう時、不便だよなー。」
私は隣の部屋をノックした。
「聡ー?いるー?・・・悪いんだけどさ、ペン貸して?」
・・・しーん。
「・・・いないの?入っちゃうよ?」
元々仲の良い兄弟だった私達はすんなりお互いの部屋を行き来する。
「はー。相変わらずぐっちゃぐちゃねー。」
男の子らしい乱雑に散らかった部屋。
勝手知ったる弟の部屋。
私は迷わず机の引き出しを開けて、黒のボールペンを取り出す。
私の部屋とは違う空気。
私はすんすん、って鼻を鳴らしながら、ころん、とベッドに横になる。
「中学生、までは一緒に寝てたのに、なー。」
澪のとも私のとも違う、匂いがする。
「ふふ。ともなれば・・・えいっ。」
ころころころ、と転がって、ベッドから躰を乗り出して、ベッドの下を探る。
・・・ごそごそ。
何かが手に触れて。
私はその何かを取り上げる。
「オトコノコでちゅもの、ねー。」
やっぱり。えっちな本。
「こんなとこじゃ、隠してることにならないぞ、聡ー。」
私は何気なく、ぺら、とページをめくってみた。
「うっわぁ・・・すごい、えっち・・・」
長い黒髪の女の子が媚びるように脚をひらいてこっちを見つめている。
「あ、あれ?」
お尻を向けて恥じらって後ろを伺っている写真を見た時。
「・・・なんだか、この娘・・・澪に似てる?」
なんとなく、だけど。
濡れたような綺麗な黒髪とはにかんだような表情。
明らかに別人なんだけど、澪を知っている人なら、易々と想像できる。
この人が聡の好みだとしたら。
「・・・澪には今後、聡に近づかないよう、言っておかなきゃ、な。」
私は小さくつぶやいた。
「でも・・・」
なんだか腰のあたりがもやもやしてくる。
たまらず、きゅ、って聡の枕を抱きしめる。
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