文章

□プロローグ
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※十代視点です


旅の途中で立ち寄ったとある都市の事だった
一回消滅したとはいえ、憧れの遊戯さんの生まれ育った土地。行くことは俺の夢だった。
そして、いま、俺がいるココがネオドミノシティ…―元童実野町だ。かねてからの夢が遂に叶ったのだ。
…ただ、それなのに満たされない。最高のパートナーと別れてもやもやとした気持ちが消えない。
俺は確かにあの時正しい選択をした筈だ。旅の間中そう思い続けた。
世界を転々とした果てに、俺が旅を止めようと永住の地を求めここに至った。
あの、初代デュエルキングが育った町ならば俺を満足させてくれるような好敵手がいるだろうと。
未だ見ぬデュエリスト達に思いを馳せてもまだ俺の心はもやもやとしたままだった。それは、実際にこの地を踏みしめた今でも同じ。

「さーて。どうすっかな…」


行くあても無く人混みに入る。歩いていれば宿も見つかるだろう、そんな軽い気持ちだった。
しばらくしてだった。俺は気づく。町の人の俺を見る目が明らかに通常の反応と違う。
よく、赤いコートのせいで目立つがそれとは全く違う。すれ違う人ほとんどが俺の事を二度見してくる。まるで何かを確認するように。
敵意、とか諸々のマイナスな感情を持たれている訳でもないさそうなので暫く放っておくといつの間にか子供達に囲まれていた。一人の男の子が歩きながら話しかけてきた。
随分とその子が無理をして大股で歩くので歩みを止める。

「お兄さんさ、デュエル強いんでしょ?」
「ん、デュエルしたいのか?」

デュエルディスクを構える俺に男の子は焦った様子で"違う!!違う!!"と言った。首を傾げると男の子はこう続けた。


「紅いコートを着たお兄さんとタッグを組むと絶対に負けないって聞いたんだ!!」


そうだ、ネオドミノシティなら遊星がいるじゃないか。泊めてもらおう…
ぶっ飛ぶ思考。なんやかんやで勝手に子供達は俺を巻き込んでタッグデュエルを始める。

デュエルの中で冴えていく頭にじわじわと染みていく事実。運命を散々否定してきた俺が言うのもおかしいかも知れないが、最初から俺がこの町に訪れる事は決まっていたのかも知れない。

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